ビジネスインサイツ62
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わるといっても過言ではない。 ②「最適化」領域 工 場 に あ る す べ て の 設 備 や 作 業 者、 ワーク、図面や品質情報、設備能力、工 程フローなどの基準類、生産計画や調達 計画などの計画類が、すべてデジタル 情報となって一元管理されるようにな る。生産状況だけでなく、設備のトラブ ルや部品の不良、工程の生産進捗の遅れ といった状況を瞬時に把握し、品質・納 期・コストが最適となる修正計画を計算 する。これにより作業者に指示を与えた り、設備には変更した計画をもとに加工 させることで、工場全体の最適化を図れる。 このような最適化を自社の工場だけに留まらず、サプ ライチェーン全体に適用されるのもそう遠くない。これ をドイツ国内の産業界全体で行おうとしているのが「イ ンダストリー 4.0」と呼ばれているものである。 ③「価値創造」領域 販売した製品がインターネットにつながれば、自社の 製品をユーザーがどのように使用しているかを知ること ができる。 これにより、 ・故障対応の迅速化 ・適切な保守サービス提供 ・次回買い替え時の適切なフォローアップ ・次期モデル開発への反映 などが可能になる。 製造業がものをつくるだけの機能だけでなく、自社製 品の提供についてマーケティング機能を強化すること で、顧客サービスをレベルアップすることができる。ビ ジネスモデルが変わり、事業の付加価値を高めることが 可能となる。 コマツが行っている建設機械の情報を遠隔で確認でき る「KOMTRAX」というシステムは、まさにこの考え 方である。機械の位置情報や稼動状況、モニターに表示 される注意警告情報などをインターネットを通してお客 様自身やコマツ販売代理店で確認することで、より良い 製品の使い方を追求できるようになる。 米国の GE(General Electric)社を中心とした企業
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ものづくりで IoT がねらう領域
が連合体となって進めているインダストリアル・イン ターネットと呼ばれる活動では、各社の製品の運転状況 などに関する情報を一元化し、各社がそれを有効活用す ることで、さらなる効率化と価値向上を目指そうとして いる。 このように人やものがインターネットにつながること で、今までにないサービスや新たな事業価値を創出でき るようになる。 IoT 活用による価値創造は、企業の製品やサービスだ けではない。各種公共機関、教育機関、医療機関、交通 機関、行政機関のすべての情報がインターネットにつな がることで、病気治療・健康管理、犯罪防止・事件解決、 不正防止、安全確保といった多彩な領域で管理精度アッ プ、サービスレベルアップが図られ、新たな社会価値の 創造をもたらすのである。
ものづくりの現場で活用される IoT
本稿では生産現場における IoT 活用という観点から、 先の 「課題解決」 領域での具体例を示しながら解説する。 JMAC と、同じ日本能率協会グループのジェー ・ エム ・ エー ・ システム(JMAS)が共同で行った開発・実証実 験の事例である(☞次頁の囲み) 。 設備点検の例は、今現在の業務の効率化や付加価値 アップをねらったものである。一方、フォークリフトの 例は、今まで見えなかった現状の可視化を行い、不可能 だった分析を可能にしたものである。 IoT が果たす基本的な役割は、
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