ビジネスインサイツ62
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【事例 2:フォークリフトの稼動分析】
ある工場では工場敷地内の原材料、 ・フォークリフト別の運搬時間比率 資材、製品の運搬にフォークリフトを 使用していた。しかし、 ・フォークリフトの稼動状況がわから ない ・フォークリフトの適正台数を知りた い ・走行経路にムダはないか ・空運搬はどれくらいあるのか、削減 できるのか といった漠然とした課題認識はあった ものの、その実態は把握できていな かった。これらの課題に応えるべく、 定期的に信号を発信するビーコン端末 とスマートデバイス(タブレット)を 組み合わせ、フォークリフトの稼動状 況や動線の実態を捉える仕組みを構築 した。 200m 四方の敷地の中で、屋外の積 下ろし場所、屋内への運込み場所、移 動経路の要所など 50 個所にビーコン を設置し、ビーコンから発せられる信 号をフォークリフトに搭載したスマー トデバイスで常時検知するようにし た。すなわち、 どのフォークリフトが、 いつの時点で、どのビーコンの近くに いたかというデータを入手できるよう にした。加えて積荷の有無を判定する ことで、 積荷運搬と空運搬を識別した。 これにより、 ・フォークリフト別時間帯別の稼動率 ・フォークリフト別の稼動率
▼各フォークリフトの 時間帯別の稼動状況
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の改善、空運搬比率の改善などの着 眼を検討する ・各フォークリフトが実際にどのよう な経路で作業していたかをマップ上 に再現することで、効率的な動きか どうか、どのエリアに作業が集中し ているかなどのレビューをする ・各フォークリフトの総移動距離、積 載移動距離、空運搬移動距離を分析 することで、効率的な経路、分業分 担、保全サイクルの適正化を検討す る
◀フォークリフト別 時間帯別の稼動率
・各フォークリフトの時間帯別稼動状 況 ・フォークリフト別の総移動距離 がわかるようになった(下図) 。 こうした実態を把握することで、以 下のように改善活動の推進を図れるの である。 ・各フォークリフトがどの時間帯に稼 動していたかを可視化することで、 時間帯別の仕事の負荷偏在の改善、 フォークリフト別の仕事の負荷偏在
フォークリフト の分析結果例
▼フォークリフトの 稼動率・運搬時間比率
は、人が考えなければならない。また、 その情報を使ってどのような改善が可 能になるのかも、IoT が自動的に教えて くれるわけでもない。IoT で収集され た大量データの分析や改善への活用方 法に普遍的なやり方があるのではなく、 現場の特性に応じて、まずは人が考え 出さなければならない。 同じように IoT を活用しても、ここ に改善力の差が表れる。なぜなら、人 の知恵が IoT をより有効なものにする からである。
【松本賢治プロフィル】
1983 年 JMAC 入 社。 以 来、 生 産・ 物流、サプライチェーンに関するコン サルティングを中心に活動を行う。30 しており、コンサルティングを行った 会社は自動車、機械、住設、化学、家
年以上にわたり多種多様な業種を経験
電、電気電子、家電、運輸、アパレル、 情報など 200 社を超える。製造業の抱 えるさまざまな課題に対して、経営コ
ンサルタトとして数多くの企業を指導、 各社の課題解決に当たるかたわら、最 近は製造現場における IoT 活用の技術
開発と推進支援を精力的に行っている。
※本稿は日刊工業新聞社刊『工場管理』 (2016 年 7 月号)に寄稿した原稿を、 出版社の許諾を得て JMAC で新たに編集 ・ 構成したものです。
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