ビジネスインサイツ62
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集まったメンバー全員が保全未経験。本部からの支援を受 けつつも、この布陣ですぐに結果を出さなければならない というプレッシャーの中、何とか踏ん張っていたのです」 (京道氏)という状況が続いていた。しかも保全効果に関 する評価項目が古河電工全社の目標値に達しない数値で推 移していた。 「そのころは会社のお荷物部隊だったかも」といささか 自嘲気味に語る京道氏だが、 「正直言って数値そのものは あまり気にしていませんでした。保全のメンバーは本当に シロウトでしたから、結果などすぐに出るわけがないので す。まずは、テスターやスパナの使い方、故障したときの 動作・行動、安全の基本などを徹底的に叩き込むことにし たのです」という責任者としてのマインドや行動に、メン バーを「精鋭部隊」へと成長させたいという並々ならぬ決 意を伺い知ることができる。 ちょうどそのころ、栃木県にある日光事業所では JMAC の支援による設備管理体制の強化活動を実施しており、本 社からは日光事業所が一段落したら次は三重事業所で、と 「誘い」が来ていた。メンバーが成長する絶好の機会と見 た京道氏が真っ先に手をあげたのは言うまでもない。
断の有効性を語った。 「京道さんもすでに認識していたとおり、設備が新しい 割に故障が多い状態でしたが、保全担当のメンバーも経験 が浅いとのことで 『早期戦力化』 が急務であるとのオーダー がありました。そこで京道さんと相談しながら、テーマを 設定していきました。結果、保全でもっとも大事な仕事そ のものになりました」 (勝浦・村田) こうして活動テーマとして、①保全教育訓練体系の整 備、②予備品管理、③保全情報管理体系の仕組み整備、④ 予防保全基準の整備、⑤故障解析——の5つが設定され、 2010 年 7 月から設備管理体制の強化活動が本格的にス タートした。
コンサルタントって何? から 自分で考えて結果を出すまでに
あるべき姿の実現に向けたテーマが選定されたとはい え、保全経験の浅いメンバーたちの最初の反応は「京道さ んが何か仕掛けている……」と他人事のような雰囲気だっ たという。 「そもそも、コンサルタントって何? という 感じでしたから。当然、何をするのかもわからない。どう やらコンサルタントという先生がいて、ここに来るようだ が、何をしに来るんだろう? と(笑) 」 (京道氏) 実際、 当時を振り返るメンバーは口々に「話を聞いても、 まったく理解できなかった。こちらの話も自分らのレベル では伝えるのは難しかったし、パソコンもうまく使えず、 活動報告など、どうしようもないレベルだった」と語る。 このような状態であっても、勝浦・村田がとくに感心し たのは 「とにかく全員が一生懸命だった」 こと。5 つのテー マに全員で取り組み、ほぼ月に 1 度(勝浦・村田で隔月) の「指導会」で、一人ひとりが各テーマの進捗を報告・発 表することになっていた。そのための準備は成長過程に必 須の「学習」であるとはいえ、経験の浅いメンバーにとっ ては、いくぶん過酷なものだったかもしれない。このよう な中でも、活動が進むにつれてメンバーたちは「何をすれ ばいいのか」という受け身から脱して、 「自分で考えて何 かをしなければ始まらない」ことに気づいていった。 こうしたメンバーの気づきを、勝浦・村田は「前向きに 準備していることがすごく伝わった。1 年ほどで『声の大 きさ』が変わった。自分たちのやっていることに自信がつ いてきた証拠」と評していた。メンバーには十分な装備も
設備管理の現状を把握して あるべき姿の活動テーマを設定
活動支援のため JMAC の TPM コンサルタント ・ 勝浦弘、 村田晃章が京道氏を訪れたのは 2010 年の 5 月。日光事業 所も支援してきた勝浦・村田の両名は、大手企業での保全 の実務、管理経験が豊富で、これまでも数多くの工場で設 備管理のコンサルティングを実施してきたプロ中のプロ。 両名による現場・現物の現状観察、各種帳票類のデータ分 析、関係者へのヒアリングなどの実態調査が行われ、結果 は JMAC 独自の評価指標としてまとめられた。 結果報告を受けた京道氏は、予想はしていたもののあら ためて客観的なデータを見せられると「ショックでした。 どれも厳しい結果で、ここが弱いから強化してください とも言いえないレベル。優先順を JMAC と一緒に考えて、 テーマを設定することにしました」と振り返えりつつ、 「経 営としては中長期の目標があって、工場としても将来像を 踏まえた設備管理のあるべき姿があるわけです。でも実際 の実力はこうで、課題はこうだと、あるべき姿とのギャッ プを知るのは責任者として大事なこと」と専門家による診
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