ビジネスインサイツ63
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株式会社ジェイ・エム・エス
これまでにない新しい事業を展開するためには、いったい 何が必要なのか――既存事業の成熟期を迎えた企業にとっ て、そこからさらに新しい発想を得ることはなかなか難し い。ジェイ・エム・エスは、このテーマに対して “ 若手の 発想 ” を活用した新規事業開発にチャレンジしている。若 手の自由な発想力を伸ばし、未来志向の事業につなげるた 理解」をどのようにして得ていったのか。その活動の軌跡 と今後の展望をお聞きした。 めの方法とは。そして、実現化のために必要な「経営層の
研究開発統括 中央研究所 研究管理室 実験室 デザイン包装室 室長
中川 宜明
Noriaki Nakagawa
氏
ところが、実際にコンサルタントが入ってくると、メン バーの意識は徐々に変わっていった。中川氏はその様子 を、 「 『あなたたちは 10 年後に自分たちが経営に参画した 際、どうなりたいか本気で考えたことがありますか』と自 分たちの痛い腹の底を突かれても反論ができないんです ね。そういうところに火をつけると奮起するメンバーたち が集まっていたので、 『それなら、 やってみようじゃないか』 とモチベーションは上がっていきました」と語る。 そしてメンバーたちは、ディスカッションを重ねるにつ れ、コンサルタントに強い信頼を寄せるようになっていっ た。 「次回までにココをもっとつめてきて」とチームに宿 題が出る中でメンバーの連帯感は強まっていき、活動はさ らに加速した。 メンバーの意識改革について中川氏は、 「上からの指示 に従って動くのではなく、 『将来は自分たちでつくってい く』という発想に切り替えていくには、非常に時間がかか ります。本に書いてあるような概論を話すより、 『実際に 自分たちで考え、形にしてフィードバックを受けて、さら に別の角度から考えてみる』ことを繰り返す方が効果的だ と考えていました。ですから、JMAC には『ダメなとこ ろはダメ』とはっきり言っていただきました。この最初の 段階で『自分たちが考えていかなければいけない』という 発想をしっかり持てるようになって、自ら活動する行動力 と共に、手法もかなり定着していきました」とその成果を 振り返る。
実現へのターニングポイント 「経営層の GO サイン」への道
「仮想カタログ」研修を通して「将来こういうものをつ くりたい」という想いを醸成してきたメンバーたち。次の ステップでは、より専門的な領域で発想力の強化を図り、 新規事業の実現に向けて取り組んでいった。 もっとも、事業化を実現するためには「経営層の GO サイン」が必要不可欠だった。 「経営層は当初、今までの 路線とは違う新しい発想に対して相当違和感を持ったはず です。また、 若者の提案はまだまだ情報不足の感が否めず、 継ぎ足す必要がありました。会社として動くには『経営層 の理解』と『提案のレベルアップ』の両方の課題をクリア する必要があったのです」と語るのは、 自身も役員であり、 事務局として経営層とのパイプ役となった佐藤雅文氏(取 締役 研究開発統括部長 兼 中央研究所所長)だ。 では、どのようにして 経営層の理解を得ていっ たのか。中川氏はまず、 経営陣に対し、将来担う 開発人材の育成の重要性 と、それを進める考え方 の重要性を説明するとこ ろから始めた。さらに、
佐藤 雅文 氏(取締役 研究開発 統括部長 兼 中央研究所所長)
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