ビジネスインサイツ63
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経営層と活動を結びつけるため、 「テーマ検討にマイルス トーンを設け、一定の段階になったら役員も入れてその テーマの Go/Stop のポイントを一緒に検討するという作 戦をとった」という。 佐藤氏は「2 回目の説明を受けたころから、経営陣の様 子は少しずつ変わっていきました。また、若い技術者たち は研究テーマ実現のために周辺情報を調べる中で初めて、 ビジネスという単位で考えたり、もっと奥深い技術の探求 ができたりしたようです。彼らは経営陣と技術者、両方の 目線から考えることができるようになり、提案もレベル アップしていきました」と評価する。 そうした中、 この流れを一気に加速する出来事が起こる。 メンバーたちが、ある新しいテーマの検討をした際に、事 業そのものが抱える大きな課題を提案した。 「これには経 営層も非常に関心を持ち、 『事業全体の早急な立て直しが 必要だ』と大きく方向が変わりました。今、それをベース に改革が動いているところです」 (佐藤氏) 。
「+ αの特別な活動」が自走で 「ルーチンな活動」に !
現在、この活動はすでに自走に入っている。3 つのチー ムを結成したメンバーたちは毎月 1 回全チームが集まっ て互いの進捗や直面した課題をプレゼン、他のチームで の経験も活かしながら互いに切磋琢磨している。 「今では、 メンバーが主体となって、将来自分たちが実現したい夢に 向けての検討プランを具体化、マイルストーンを自ら設定 し、能動的な活動としてその活動に対するどんどん自走し ていけるようになりました。われわれも活動プランとメ ンバーのやる気を考慮し、予算もしっかりつけて、JMAC より指導いただいた観点をベースにメンバーへ助言するな ど自立化を図っています」 (中川氏) 活動成功のポイントについて中川氏は、①「自分たちで 考える」という発想に変えていくこと、②理想を現実につ なげる考え方と手法を身につけること——の 2 点をあげ る。とくに②については「将来こうしたいという理想を現 実につなげるために 『仮想カタログ』 『樹形図』 『ウォーター フォール』 などの考え方や手法を定着させました」 と語る。 「ウォーターフォール」は、各工程を段階的に検討し、前 の工程に戻らない開発手法で、現在では全事業にこの手法 を根づかせていくことが事業改革の骨格にもなっている。 佐藤氏は、 「今ではメンバーたちが普通にこれらの手法 を取り入れ、自分たちのルーチンで活動が動いているとこ ろが一番の成果だと思います。活動当初は + αの活動に 入るということで、自分の職場での立ち位置に戸惑ったこ ともあったようですが、事前に問題点をしっかり抽出し、 メンバーを含んで活動する前の段階がブレなかったところ がよかったですね。当社だからこそ抱えている問題を最初 にしっかり共有することが重要かなと思います」と述べ、 「毎年、この活動に入りたいと手をあげる人が現れて、新 しいメンバーを少しずつ入れています」と、活動が次世代 そして未来へと徐々につながっている実感を語る。
活動から何を得たか?—リーダーの声①
これまでの活動とは違う試みを感じたので、最初は 率直に面白そうだなと思いましたが、何をすればいい たちの考えをまとめるのに苦 のかという不安もありました。年上、年下のメンバー 労しましたが、議論すること で研究室の “ 壁 ” を超えた検 討会も可能になりました。技 て、マーケティングの要素や 経営者の視点で見れるように
中尾 典彦 氏 中央研究所 第 4 研究室
術的な課題解決にプラスし
なったので、今は国内だけで すが、将来は海外をにらんだ 開発を目指したいですね。
活動から何を得たか?—リーダーの声②
参加しているメンバーの話を聞いて、面白そうだと 手をあげて途中から加わりました。リーダーになった ときは一番年下で、メンバーの意見を調整するのに苦 オデザインの手法でベクトル 発化してまとまるようになり 労しましたが、JMAC やバイ を合わせることで、議論も活 ました。リーダーとしての責 任感も生まれ、これからの市 まだこの力を伸ばしたいです
大住 和馬 氏 中央研究所 第 3 研究室
各世代が想いをつなぎ 自分たちの 10 年後をつくっていく
新しい世代が自ら会社の将来をつくっていく環境が芽生 えた今、ジェイ・エム・エスは本活動で培った発想力や手 法を基盤として、さらなる挑戦を続けている。 たとえば、 国が推進し、 産学連携で取り組まれている「バ
場を見る力も得たので、まだ ね。これからも継続して実践 していきたいと思います。
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