ビジネスインサイツ63
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ヤンマー株式会社
ヤンマーは 1968 年、品質に関する権威ある賞、 「デミング賞」をエンジ ン業界で初めて受賞した。それを支えたのは、YQM(YANMAR Quality Management:ヤンマークオリティマネジメント)と命名された全社あげて の総合品質管理活動だった。50 年経った今、改めて「品質第一」を掲げたヤ ンマーは、品質保証教育の再体系化に取り組み始めた。品質革新ロードマッ プと教育体系の関連づけや、各事業体への説得など、緻密な計画と準備が行 われ、徐々に品質意識の向上が進みつつある。 「プレミアム品質」へ挑戦する べく、品質保証教育再体系化への軌跡、そして今後の展望などをお聞きした。
野田 康宏 氏 Yasuhiro Noda
品質保証部 企画グループ 専任部長
スピードが重要視されて、品質改善活動が停滞した時期も あったようです。熱心に取り組んでいたときには品質水準 がしっかり維持されていて、少し手を緩めるとこれを維持 しにくくなる傾向があることがわかってきました。ですか ら、今まさにもう一段高い品質水準を目指すのだったら、 改めて『ヤンマーといえばこの活動だ』と言われるような 全社的な取組みを仕掛けるべきだと考えました。まさに、 『プレミアム品質』への挑戦です」と説明する。 野田氏は 「私は、 『知っていること』 と 『できていること』 とのギャップを認識し、このギャップを埋め続けていくこ とで真の実力がつくと思っています。ですから、この教育 を全社に広げて実力の底上げを図っていきたいと思い、活 動を始めました」と振り返る。 こうして 2015 年、ヤンマーは JMAC とともに全事業 で本格的な品質保証教育を展開するべく、大きく舵を切っ たのである。
そこで、 「品質を確固たるものにするためには、各種手 法の知識教育だけではなく、人づくりそのものが重要であ る」という観点から再構築を行った。 野田氏は「教育体系をつくる前に、まず品質マネジメン トシステムの成熟度の再定義やヤンマーの向かうべき方向 性をしっかりと議論し、品質革新ロードマップを策定しま した。その中で、品質保証教育の位置づけを明確にしてい きました」と説明する。 また、この教育の目標について野田氏は、 「最終的に目 指すのは『定着』です。学ぶことだけが目的ではなく、学 んで実践して定着して初めて効果が出るので、 『定着する までしつこくやる』ことが大切だと思っています。受講者 自身もわれわれ仕掛ける側も、 『しつこさ』を前面に出し 続けていきたいと思っています」と述べる。 渡部も「 『1 日、2 日の座学でいろんな手法を学んで、 あとは職場に戻ってそれを実践してください』という掛け 声だけで終わることなく、教育を起点に、品質改善サイク ルがある程度回り始めるところまで『しつこくフォローし 続ける』ことにこだわりたい」と説明する。 それでは全員参加型で取り組むために、各事業体にはど のような働きかけをしていったのであろうか。 「まずは事業体の意見を聞くべきだと考え、各事業部の 品証部長から意見を伺いました。さらに本社の生産本部や 研究開発本部など、品質のつくり込みに密接に関わってい る部門や全社経営革新プロジェクトメンバーからも幅広く
品質改善サイクルを回すべく 「定着」した教育を目指す
活動を始めるにあたり、これまでの教育体系を振り返る と、①教育メニューは多岐にわたるが体系的ではない、② 各教育項目が実務でどれだけ成果につながっているかが不 明確である——ということがわかった。
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