ビジネスインサイツ63
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というのも、生産性向上のカギとなるペン先加工では繊 細な手仕事も多く、 人の手を介した工程は 50 にもおよぶ。 また、万年筆はその「デザイン」や「精緻なつくり込み」 など “ 人間の感性に訴える部分 ” が大きな商品価値となる ため、単なる工業製品ではなく工業製品+αの部分も考え なければならない。この付加価値の部分を工業的につくる のは非常に難しい。たとえば、ペン先の材料になる金を磨 いて光沢を出すことひとつとっても、人の手と同じ加減を 機械が再現するのは容易ではない。 「それをできるだけ工業化していくのがわれわれのチャ レンジでもあり、その中でどうやってつくっていくかが万 年筆の面白いところでもあります」 (藤井) 。 中田氏は「ペン先工程にはとても手間がかかり、一番厄 介な加工工程なのですが、やはり加工はメーカーにとって 非常に大きな要素ですから、実はそこが大切なところかも しれませんね。たとえば、万年筆を手で空書きしてペン先 の具合を検品するなど、手仕事の大変な部分、そういう 『ハート』があるような部分は、これからも大切にしてい きたいと思っています。どこを合理化して何に付加価値を つけるかを明確に分けて、工場のみなさんにもそれがわか るような状況にしていけたらいいですね」と語る。 ン先がほしかった』というものをつくり、定番化してほか のペン先のラインナップに入れていく、といった連続性を 持たなくてはいけない。次の 100 年に向かって 101 年、 102 年と日常茶飯でアーカイブを積み上げていくことが 一番大切です」と視線はすでに次の 100 年にある。 プラチナ万年筆は現在、ハードの革新を一気に進めてい る。藤井は「今後、かなり高度な設備を導入して『世の中 にないもの』を『世の中のつくり方とは違う方法』でつく ることに挑戦します。これが外部のみならず社内へのア ピールにもなって、みなさんが『今よりワンランク上の仕 事をしないとついていけないな』と刺激を受けることを期 待しています。3 年後の 100 年目までには土台をつくり たいですね。今その第一プロジェクトが動いているところ です」と今後の展開について語る。 中田氏は、 「最新式の機械を導入して、工場のみなさん がドキドキワクワクしながら仕事ができるような環境をつ くってあげたいですね。これは藤井さんのプロジェクトを 見て、いつも私が想いを馳せていることなんですよ」と楽 しそうに語る。 「それから、みなさんにはもっと『自分た ちはこんなにすごいものをつくっているんだ』という自信 を持ってほしいですね。社員の心に火をつけるのが経営者 の仕事だと思いますし、やっぱり仕事は面白くなければい けません。そういうところから、新たな発想が生まれてく るのではないでしょうか」と社員への想いと期待を語る。 次の 100 年を見つめ、新たなステージを目指すプラチ ナ万年筆。時代は変わり、幾多の変革を経ても変わらない ものがある。ハートからハートへ。彼らの熱いハートがつ むぎだす万年筆は、これからもユーザーのハートをとらえ 続ける。
そして プラチナ のように輝こう! つくろう 明日のプラチナを みんなで
次の 100 年を見つめ、 社員のハートに火をつける
プラチナ万年筆は、2019 年に創業 100 周年を迎える。 中田氏は「100 年は大切な節目ではありますが、次の 100 年への通過点に過ぎません」と語り、 「100 周年記念 の万年筆をつくるときにも、お客様にとって『こういうペ 担 当 コ ンサルタントからの一言
藤井 広行
シニア・コンサルタント
ものづくりは「基本に忠実」であるべき
ものづくりのすべては、基本の積み上げで成り立っています。奇をてらった 策は成功しません。プラチナ万年筆の皆様にも、常に基本に忠実に「なぜで きないか」を考えることを勧めてきました。ものづくりは、材料に物理・化
学法則に則った変化を与えているに過ぎないからです。工場で起きる問題は 原理・原則から逸脱したところで発生します。それを見つけて本来の姿に戻 す行為がマネジメントであると言えます。問題に気づき、基本に忠実に考え に戻ろう』という言葉を贈りたいと思います。
行動しよう!——創業 100 周年を迎えるにあたって、次の 100 年も『基本
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