ビジネスインサイツ64
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飯野海運株式会社
飯野海運は 2013 年、 「競争力ある筋肉質な会社」 を目指し、 人材マネジメント改革をスタートさせた。キーワードは “ 組織力強化 ”。しかし、 一連の検討の中で浮き彫りになっ
たのは、社内のコミュニケーション不足だった。この解消 策として行われたのが、コミュニケーション強化活動「イ イノパワーアップミーティング(IPM) 」だ。“ お互いに立 でどのように変わっていったのか。その活動の軌跡と今後 の展望をお聞きした。 ち入らない ” クールな関係を築いてきた社員たちが、IPM
人事部 人事課/研修課 課長
井上 智広
Tomohiro Inoue
氏
です。まず、経営層をはじめに管理職・担当者層に至るま で広く社内ヒアリングを行いました。そこから『前向き挑 戦的行動が行われている人材・組織』という “ 目指したい 組織 ” の姿を明らかにしました。さらに目指したい組織実 現のための “ 求める行動規範 ”“ 求める人材マネジメント ” を導き出し、これらに沿う制度を構築していきました。人 材育成の体系づくりの元となる人材像もこの理念から導き 出しました」と説明する。新しい人事制度に込められたこ の理念は、今も一番の礎となっているという。 併せてハンドブックも改訂したが、より人材マネジメン トに重点を置く内容となったことから、名前も『人材マネ ジメントハンドブック』に改称した。 人事制度の改定後は、 「新しい評価制度」の運用開始に 向けての研修がスタート。新しい評価制度では、人材育成 を適切に行うためにメリハリのある評価を目指す一方で、 評価者によって評価にバラツキが出ないよう “ 評価の目線 合わせ ” が必要となる。モデルケースを用いたり、実在者 をモデルに評価を行うリアリティのある実習を繰り返した りして、評価レベルアップを目指している。また、成果評 価の拠り所となる目標設定については、部署単位で上司と 部下が議論をしながら行う場も設けた。 一般職と若手総合職に対しては、求める人材像に基づき 「問題解決スキル研修」や「ビジネススキル研修」を実施 していった。社内研修の場がこれまでほとんどなく、業務 との兼ね合いが難しい面もあるが、参加者には良い刺激と
なっているようだ。
組織力強化の第一歩は 「もっとお互いを知ること」だ
2015 年度には、新評価制度をスタートするとともに、 社内のコミュニケーション強化活動「イイノパワーアップ ミーティング(IPM) 」を企画・実施した。その理由につ いて井上氏は「当社は個人で独立して行う仕事が多く、お 互いにあまり立ち入らないため人間関係が希薄になりがち です。自組織の力を最大限に発揮するには人間関係が良く なければいけませんから、もっとお互いのことを知るため の “ 情報交換の場 ” が必要だと考えました」と説明する。 このとき、人事部は参加部署を公募する一方で、自ら率 先して IPM への取組みを始めた。 井上氏は 「人事部の場合、 8 割が一般職の女性です。IPM を通して “ 全員で同じ方 向に向かっている ” という意識を共有できれば、彼女たち ももっと仕事が楽しくなるし、やりがいも出るのではない かと考え、あえて人事部が主導しました」と説明する。 IPM では、仲間の新たな一面を知り、もう一歩踏み込 んだ関係をつくるために「ワタコン」と「from to」を行 う。 「私、実はこんな人です」という自己紹介(ワタコン) を行い、その後、お互いの「良いところ・今後に期待する ところ」を付せん紙に書いて模造紙に貼っていく(from to) 。模造紙には縦と横に同じ名前を書いたマトリクス表
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