ビジネスインサイツ64
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そちらに注いでいます。標準ルールを守ることで、お客さ まへ不良が流出するのを防止するということです」 (小西 氏)と現場ぐるみで品質を重視した活動を展開中だ。こう した「お客さま」を意識した活動ができるのは、不良が出 ないための基準やルールづくり、それを守る人づくりを地 道に継続してきたからこそと言える。 2005 年から活動を支援している JMAC の TPM コンサ ルタント・粟津保は「同社は『改善積上げ型』の活動で逐 次レベルアップしながら『あるべき姿』へ向かっているこ とがわかります。こうした取組みでバブル崩壊後の低迷、 販売量の変動、原材料費やエネルギーコストの増大をみご と克服してきたのです。その活動を一言で言えば、環境変 化に即応できる企業体質の構築ということです」と語る。 長らく PDCA を継続して成果を積み上げて難題を切り 抜けてきたからこそ、 「東洋理工の TPM」として特徴ある 活動が定着していったのだろう。このことを横山氏に問い かけると、 「ところが長くやっているからこそ、活動初期 の“つらさ”を知っている人が徐々に減っていくわけです。 今は 4 割もいないくらいです。逆に言えば、活動に対し て『そこまでやるのか』と感じる人も中には出てくるわけ です」と冷静に従業員の意識の変化も見ているようだ。 実際に同社が 2001 年に TPM 優秀賞を 04 年にその継 続賞を受賞してから、 「その後で少し活動が停滞した時期 がありました。そのころから導入期を知らない人も増えて きましたし、何かしらのかたちで『やり直し』も必要だね という議論も出たし、実際に2S(整理・整頓)などの見 直しで徹底化を図りました」 (小西氏)という。 「確かに仕事への意識の変化を感じます。20 年前とは 違って 『個』 が優先される場面が多くなりました。しかし、 時代や環境がどうであれ『現場の基本』をおろそかにはし たくないという強い思いがあります」と語る横山氏が仕掛 けたのは、ISO を導入してとくに品質において「手段とし ての TPM」の位置づけを明確化したことだ。 ISO・TPM 推進事務局 主査の鈴木順一氏が語る。 「品質方針にはっきりと『TPM 活動を通して継続的改善 を図る』と定め、TPM を進めないと ISO も達成できませ んという枠組みにしています」 現場でのチームの方針は TPM や ISO の指標と直にリ ンクしたものになっているのだ。すでに仕事と切り離され た特別なプロジェクト活動ではなく、仕事そのものという 位置づけになっているという。 「仕事として位置づけた TPM が東洋理工のものづくり の根幹にしているので、最近入社した人は『TPM は当た り前』と捉えている人が多いようです」 (横山氏)
「TPM ラリー」で 経営指標と現場活動をリンク
どうやら同社の活動が長い期間にわたって継続している 秘訣は、 「仕事化」であると言えよう。これは「活動を仕 事として捉える」という単に意識レベルだけのことではな く、 「業績を上げる(目的) 」ことと「TPM(手段) 」が連 動するようにしている点に注目したい。すなわち、 「業績 を上げ続ける=活動を継続する」という仕組みである。威 勢よくスタートした社内活動でも、メンバーの入れ替わり や方針変更などで停滞、中断、そして “ 忘却の彼方へ ” と いう道をたどることも少なくないが、同社にとってそれは もはや杞憂である。 こうした仕組みは実際にどのように運用されているのだ ろうか。横山氏が語る。 「報奨制度も絡めて『TPM ラリー』というものを仕掛 けています。簡単に言うと、毎月定められた項目に対して チェック・点数づけをして結果が良いところには報奨金を 出すというものです。さまざまな項目を設けていますが、 当社では経営計画にリンクする項目も細かくサークル(活 動チーム)に降ろしています。たとえば、A 部門の不良率 の目標はこうで B 部門はこうで、全部門が達成すれば利 益計画も実現できるということを、サークルレベルまで細 かく設定して評価しています」 これらの評価を毎月見ている粟津は「会社業績、職場業 績の指標(KPI:Key Performance Indicator)と活動系 の指標(KAI:Key Action Indicator)がうまく連動し ています。基本的に全社で各部門が協力して会社の業績を 良くするための仕組みになっています」と語る。 「当初は『あれやれ、これやれ』と活動のための指標が
小西 和彦 氏 (取締役 製造部 部長)
鈴木 順一 氏 (ISO・TPM 事務局 主査)
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