ビジネスインサイツ64
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まだあって、社員たちも本当は何をやればいいのかわから ずに動いていたこともありました。今はまず『利益を出す ために何が必要か』があって、それをラリーの項目に落と し込んでいますし、トップダウンだけでなく、ボトムアッ プによる指標のすり合わせも行っています」 (横山氏) こうした仕掛けを確実に運用していくために、事務局 では「月末には社長と事務局で必ずラリーのポイントを チェックします。その結果を受けて、リーダー会議では一 方的に指摘するだけでなく、“ キャッチボール ” しながら 議論します。同じ指摘を繰り返さないような仕組みです。 もちろんポイントの達成も大事ですが、こうした事務局の バックアップで現場を活性化していくねらいもあります」 (鈴木氏)と経営指標と現場活動が噛み合っているかを常 に確認できる仕組みがあることがわかる。 東洋理工の活動継続の仕組み、そして事務局による運用 がどれほどのものかは、このリーダー会議がのべ 205 回、 JMAC コンサルタントによる「TPM 指導会」が 200 回を 超えるという事実からも推し量れる(2017 年 3 月現在、 両会議とも原則月 1 回開催) 。あらためて横山氏に活動を 振り返ってもらい、継続の秘訣を聞いてみた。 「仕組みや運用があっても、 それを支えているのは “ 人 ” ですから、さまざまな思いがあります。当然、まだ活動が 当たり前になっていない、まだ能動的な動きになっていな い人もいます。経営の方でも『まだまだかな』という意識 があるからこそ、 継続できているとも言えます。 『まだまだ』 の部分については、社内だけでは “ お茶を濁す ” こともあ るので、外部のコンサルタントからの指摘やアドバイスも 必要です。指導会がこれだけ続いているのも、こうした理 由からだと思います」 同社の継続について粟津は「半期ごとに次の半期をどう 担 当 コ ンサルタントからの一言 TPM を導入して約 20 年。会社の背骨として TPM 活動 を定着させながらも、次の「あるべき姿」を追求しつづけ る東洋理工。これからも経営と現場が一体となった TPM 活動が継続していくに違いない。 するか、年ごとに次の年はどうするかとハードルを上げた 提案に対して、経営陣がそのレベルになりたいという強い 意欲があるからです。利益体質を構築しながら確実にス テップアップしていきたいという企業であれば、活動は継 続します」と語る。
次の 「まだまだ」を解決する ために TPM 活動を続ける
おそらく東洋理工がものづくりをしていく以上、同社の TPM 活動は終わらないだろう。 「まだまだ」が解決されて も、 すぐに次のレベルの 「まだまだ」 に挑戦していくからだ。 「品質面でもチャレンジ課題はまだまだあります。めっ きでは職人的なカン・コツ、過去の経験で操作する部分が いまだに多いのです。管理すべき項目をしっかり決めて、 その基準を確実に守ることで品質を確保する必要がありま す。こうしたことを見える化して、チーム力でものづくり ができるようにしたいです」 (小西氏) 「その業務はその人しかできないという状況のままです と、なかなか部署間の異動もしにくいのです。本当はもっ といろいろな経験ができる会社にしていきたいと考えてい ます。当社にとって TPM は 『背骨』 のような存在だと思っ ています。時代の変化に関わらず、会社を支える基盤でも あり、ものづくりの基本の基本なのです。次の時代にもい い姿でバトンタッチしたいですね」 (横山氏)
TPMは
つなげること
マネジメントを
メンテナンスと
TPM 活動を経営指標とリンクさせる
TPM 活動の支援とは、 「経済環境の変化に対応できる企業体質づくり」をお手 伝いすることと考えています。現場で不良が減り、故障やトラブルも減ってい るにも関わらず、会社の収益が向上しないとしたら、活動そのものが不十分な
粟津 保
TPMコンサルタント
のかもしれません。損益管理とリンクした原価管理、すなわち売上高と製造原
価や生産の原単位の見える化ができていないからです。生産原単位と経営指標
をリンクしていないと TPM の効果も見えてきません。東洋理工さんでは、こ れらの見える化の重要性を経営側だけでなく現場レベルでも理解して活動を実 践しています。環境変化に対応し業績を向上させる仕組みが同社の強みです。
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