ビジネスインサイツ64
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設立:1917 年(大正 6 年)5 月 15 日 資本金:355 億 7,900 万円(2017 年 3 月現在) 従業員数:連結 30,334 名 単独 7,539 名(2017 年 3 月末現在) 衛生陶器、システムトイレ、腰掛便器用シート(ウォシュ 主な営業品目 : レット)、水まわりアクセサリー、浴槽、ユニットバス ルーム、セラミック、環境建材など
トイレや洗面器などの衛生陶器で国内トップシェアを誇り、2016 年度は過去最高 益を更新した TOTO であるが、近年は 2 度の赤字転落を経験している (1998 年 度経常赤字、2008 年度は純利益が赤字) 。そのいずれをも大胆な改革で V 字回 復に導いたのが、代表取締役会長の張本邦雄氏だ。しかし張本氏は言う。 「私は かなりの慎重派で、気合で動いたことは一度もない。私にとって定量化とロジック は、避けて通れない意思決定のプロセスだ」 。圧倒的な定量化と緻密なロジック に裏打ちされた改革は、科学的でありながら人の心に働きかけ、行動を変えてい く。 「改革や革新は、最後は周りの人がどれだけ納得感を持つかが重要である」と する張本氏に、事例を交えながら改革への想いとその軌跡をお話しいただいた。
代表取締役 会長 兼 取締役会議長
張本 邦雄 氏
Kunio Harimoto
ありましたので、特約店が受ける影響を試算しながら、1 年かけて一つひとつの特約店に説明を尽くしていきまし た。実は、これが実現できたのには、ある大きなきっかけ がありました。大手特約店の倒産です。それまでは経営危 機に陥った特約店があると TOTO が人や資金を投入して 救済していましたが、当時はもうそんな時代ではなくなっ ていたのです。 ロイヤリティが高く販売力もある特約店で、 経営者の顔も目に浮かびましたが、改革のために涙を呑ん で静観の姿勢を貫きました。 これを目の当たりにした他の特約店は強い自立心を持つ ようになり、動きがガラッと変わりました。従来の直接取 引先は設備系の専業特約店が大半でしたが、それからはあ らゆる流通の方と TOTO の意思を明確にして付き合う姿 勢に変えていき、現在では驚くほど多様な流通の方と仕事 をするようになってきています。
いましたが、パイが減ったのですからそれではやっていけ ません。そこで、 営業力を強化するために行ったのが、 「販 売革新」 という活動です。 「接点営業 ・ ソリューション営業 ・ 組織営業」の 3 本柱で販売の体制を変えていきました。 「接点営業」とは、お客様により近いところで営業をす るという意味です。たとえば、特約店ではなく水道工事店 に行って来月の工事状況を聞き、 特約店にフィードバック ・ 共有化します。また、 「ソリューション営業」は「来月は どこの工事がとれそうですか。その物件をとるための課題 は何ですか? 一緒に解決しましょう」と積極的に提案し ようということです。 ここで一番大事なのは、セールスが「本来の営業とは何 か」を理解しているかどうかです。営業の本来の仕事は、 商品の説明をすることでも、在庫の問い合わせを受けるこ とでもありません。価値提案です。そこで、本来業務以外 の問い合わせをすべて受ける「営業センター」を全支社に 設置し、 「組織営業」の体制を構築しました。 すると、セールスは積極的に接点営業に行き、価値提案 をするようになっていったのです。営業センターが機能し だしたことで、彼らは自分がすべき仕事を自然と理解して いったのです。よく企業革新はトップダウンでやれという 話を聞きますが、なかなか変わらないものです。結局は個 人の価値観がどう変わるかですから、そういう環境を用意
「本来の営業」とは何か 「営業センター」が改革のキーだった
こうして流通網の整備は少しずつ進んできたのですが、 もう一方で大切なのは、TOTO セールスの動き方です。 従来は、特約店に行って在庫を確認し、注文書を受け取っ てくる「流通営業・御用聞き営業・属人営業」でも回って
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