ビジネスインサイツ64
- ページ: 7
- 7
ス経営をここまで実践している企業は他に類を見ない。 「私たちが目指す『マーケットイン』を真に実行するた めには、お客様の『これがほしい』というものを、グルー プが持つ多様な事業体と生産手段・技術を組み合わせ、す ぐに提供できる体制を築き上げる必要があります。そのた めには、組織間の壁を取り払ってグループ全体で『創って 作って売る』 ための小さなチームをたくさんつくりました。 そしてリーダーが経営者のようにチーム運営し、プロジェ クト型で物事を進めていこうというところから始まりまし た」 (山口氏) しかし、実際に活動を始めてみると、 「本を読んで研究 しても、何を開発したらよいのか、どこからその種を探し てきたらいいのかわからず、 なかなかうまく進まなかった」 と山口氏は当時を振り返る。 そのような中で、 JMAC の “ 種 の探し方 ” に関する研修に人事部長が参加し、これをきっ かけにコーポレートで活動を応援していこうと JMAC に 支援を依頼した。 こうして 2004 年、日軽金グループは JMAC をパート ナーとして、 「創って作って売る」を加速させるべく新た な挑戦へと踏み出した。
●プロジェクトのステップ ステップ①「テーマ探索プログラム」 提案・企画手法を習得する (2 〜 3 年後の魅力ある事業開発実現の ためのテーマ選定)
探る
ステップ②「事業化実践プログラム」 具体的なビジネス展開手法を習得する (課題の抽出・戦略の策定・コストの考 え方・販売チャネルの構想・知財戦略・ 海外ネットワークの活用など)
創って 作って 売る
くの新商品・新事業を創出してきた。たとえば、 「使用済 み核燃料収納容器用板材『MAXUS』 (マクサス) 」は、ア ルミの粉末に中性子を吸収する炭化ホウ素の粉末を混合し て焼成した、世界で唯一の板材である。従来の工法と比べ 極めて高い耐久性を有するものであり、原子力分野におけ る画期的な技術といえる。 「これは部門間の壁があったらできなかったと思います。 横串スタイルで『粉末の会社』 『板をつくる会社』 『型をつ くる会社』の人たちの力を結集したからこそ実現できまし た」と山口氏は振り返る。
「探って」 「創って作って売る」 メンバーの汗と涙が成果に
活動をスタートするにあたり、 まずは「種を探し」 「創っ て作って売る」を実現していくためのプログラムを導入し た。プログラムは 2 ステップで構成されている(右図) 。 毎年、5、6 チームずつが数ヵ月かけてチームで検討し、 最後は役員会(グループ各社の社長や役員)で企画発表会 を実施する。 「メンバーは 30 代後半の若手が中心で、会社や経歴は みなバラバラです。日常業務と兼務しているため、最初は 『負担が大きすぎる』とすいぶん反発がありました」 そのため、少しずつ人事制度やチームの編成方法を改善 し、今の形に行きついたという。 「チームメンバーは若手が中心ですから、相談役として チームに 1 人ずつ部長クラスのコーチをつけたり、知的 財産の問題に対処できるよう特許部の担当をつけたりして います。今は『みんなで一緒にやっていこう』という感じ で、1 つのチームとしてまとまってきています」 こうした横串体制でのチーム活動を通し、これまで数多
お客様が「本当にほしいもの」は何か “ つぶやき ” から潜在ニーズを探る
2011 年からは、チームでのテーマ探索・事業化推進に 加え、日軽金グループの従業員が全員で参加する「情報探 索活動」 (テーマ探索)もスタートした。 この活動の目的は、自動車と電機といった「分野と分野 の “ 隙間 ” にあるニーズ」をとことん探索し、新商品・新 ビジネスにつなげていくところにある。そのヒントとな る情報をグループ全員で探そうというものだ。 「お客様の 『もっとこういう風にすればいいんだけどなぁ』 『これをア ルミ素材に変えられればなぁ』といった、ふとしたときに 出る“つぶやき”に耳を傾け、 『お客様が本当にほしいもの』 は何かを考え、提案していきたいという発想から始めまし た」 (山口氏) “ つぶやき ” は、社内のイントラネットでグループの誰 もがダイレクトに投稿できるようになっている。初年度
- ▲TOP