ビジネスインサイツ64
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し、新商品・新ビジネスを創出してきた日軽金グループで あるが、それはトライ&エラーの歴史でもあったと山口氏 は振り返る。 「今でこそこうして成果をお話しできていま すが、当初は周りから『会社も価値観もみんな違うわけだ から、うまくいかないのでは?』 『マトリクス組織で、誰 がどうやってチームメンバーの評価をするの?』などと言 われました」と明かし、マトリクス組織ならではの課題が あったことを明かした。 そして、成功のキーポイントは「情報の共有化」にあっ たのではないかと山口氏は分析する。
▲模造紙に貼られた膨大な数の “ つぶやき短冊 ”。お客様のつぶや きを集めて検討し、チームづくりに活かしている。同社のスピー ド感はここから生まれる。 (写真提供:日本軽金属)
「マトリクス組織は元来、情報の共有が難しいと言われ ています。しかし、会社や経歴、価値観が違う人たちが力 を合わせるためには、情報を共有化して『なぜこうするの か』 ということをみんなで腹落ちしていることが重要です。 また、その情報共有の場で、社長や役員、そしてメンバー の上司などが現場の様子を直接知って評価できるような施 策が必要だと考え、 現在は「共創フォーラム」と「三現会」 という報告会を定期的に実施しています」と説明する。 「共創フォーラム」は年 4 回、東京 ・ 大阪 ・ 名古屋 ・ 新潟 ・ 研究所・製造所をテレビ会議でつないで行われる。山口氏 は「このフォーラムで他チームの人たちとつながり、全体 の中で自分たちが何を開発してしようとしているのかを理 解し、ヒントや気づきを得てほしい」と語る。 「三現会」は「現地・現物・現実を重視する会」として 年 4 回行われ、プロジェクトメンバーが活動状況や困り 事もすべて包み隠さず報告する。 「ここで重視しているのは、活動を押し上げる “ ブース ト機能 ” です。提案の審議はせず、どうすればうまくいく のかを一緒に考えます。ただ、開発は残念ながら結果が出 ないことの方が多いため、結果だけを見て評価するのでは なく、メンバーの熱意や努力、日常業務と兼務してチーム 活動に参加してくれた点を高く評価するように心がけてい ます。この方法を取り入れてからは、 『たいへんだけどプ ロジェクトに参加してよかった』という声をよく聞くよう になりました」 (山口氏)
の投稿数は 400 件だったが、徐々に増えて 2016 年度は 2,600 件を突破、6 年間の累計は 9,000 件以上となった。 大幅に増えた背景には、 「今は投稿の質ではなく量を求 めています。投稿数に応じて報奨金の出る “ アルミ賞 ” も 設けました。本人が面白くないと思っても、他の人から見 たら面白いかもしれないし、パズルのように他のピースと 合わせると完成するかもしれない。だから、情報は些細な ものでも断片的なものでも構わないから、とにかくみんな でつぶやきを集めよう、と呼びかけています」という “ 仕 掛け ” もあるようだ。 投稿されたつぶやきは、毎週1回、グループ直轄の技術 開発委員会で審議し、 調査のうえ事業化可能と判断すれば、 チームを編成して実行に移す。 委員会では、社長と役員 10 数人が模造紙にびっしりと 貼られた “ つぶやきの短冊 ” を前に、立ち動きながら侃々 諤々の話し合いをするという。投稿者に 「面白い情報だね」 「このあとどうなったの」と直接メッセージを送ることも 多いという。審議→短期集中調査チームの調査→再審議→ チーム結成と、そのサイクルは実に速い。 「ビジネスに応じたチームをパッとつくり、 スピーディー に進めるのが特徴です。 ここでも横串体制の強みを活かし、 すでにいくつかの新商品やビジネスが生まれています」 と、 新たなテーマ探索手法にも手応えを感じていると語る。
マトリクス組織に必要なのは
情報の共有化による “ 腹落ち ” だ
こうして 16 年の長きにわたって横串という考え方を通
「メンバーの成長」 と 「企業体質の変化」 プロジェクトが人と組織を変えた
現在、2004 年から始めた「テーマ探索」 「事業化実践」 プログラムの卒業生は 350 人となり、32 テーマ・160 人
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