ビジネスインサイツ65
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さらに今年は、技能伝承についても P コースの中で取 り組んだ。それまでは繁忙期に手伝いに来る OB に若手を つけて 3 〜 4 か月の OJT を行ってきたが、こうした言葉 や文字にできない部分はなくしていこうと、熟練の職人技 を分析して手順書に落とし込むことにも挑戦した。
題となるが、今回の P コースでリーダーたちが改善活動 を理解したことは、 その大きな一歩となった。村上氏は「P コースを受講して、やっと点と点が線につながりました。 来年もリーダーもしくは次期リーダーでやっていきたいで すね」と期待を込める。 P コースの講師を務めた JMAC の有賀真也(チーフ・ コンサルタント) も 「改善活動は 『測定なくして管理なし』 の言葉が示すとおり、地道な取組みを継続して行うことが とても大事です。P コースにおいても新寿堂のみなさんは この考え方を十分に理解し、それぞれのリーダーシップを 発揮しながら短期間で一定の成果を創出しました。これか らもさらに飛躍が期待できる組織風土が醸成されつつある と感じています」と評価している。
「自信」と「自覚」が原動力 自律的な活動を始めたリーダーたち
P コースを受講したリーダーたちの変化について、村上 氏は「あの後、彼らは大きく変わりました。堂々としてい る。自信がついたのかもしれませんね。今までは『うまく 伝えなくては』 『こういうことを言うとどう思われるかな』 と考えてはっきりものを言えなかったのですが、今は朝礼 などでも堂々と話せるようになりました」と語る。 さらに、事務所内にリーダーたちの席を設けると、交流 を深めながら自律的な活動を始めたという。 「彼らは現場 の人なので今までは席がありませんでしたが、事務所内 に席を設けました。P コース終了後には『データをとりた いのでパソコンを購入してほしい』ということで 1 人に 1 台パソコンを与えたのですが、みんな工場での仕事が終わ ると集まってきて、情報共有しながらいろいろとやってい ますね」 (村上氏) 今後はリーダーの指示を全体に浸透させていくことが課
「人は必ず変わる」 トップの信念が人を育て、組織を変えた
村上氏には、毎週の朝礼のほかにも 5 年間ずっと取り 組み続けてきたことがある。従業員とともに行う工場での 作業だ。主に製品の積み上げなどを行ってきた。雲野氏は 「最初はみんな本当に驚いてしまって、 『今、社長が工場に いるんですが、どうしたらいいですか』と事務所に駆け込 んでくる人が相次ぎました」と振り返る。村上氏は「メー カーは現場が一番だと思っていますし、いろんなことが起 きるのも現場です。そこに入り込まなければ、この会社の ことは何もわからないと考えています」と説明したのち、 こうも述べた。 「5 年前に社長就任の挨拶をしたときの、 彼らの不安そうな目が未だに忘れられない。 『子会社になっ て、新しい社長が来て、私たちはこれからどうなるの?』 と。だから、 『まずは彼らと一体にならなければいけない』 と思ったのです」 こうした取組みを続けた結果、今では従業員の「納期 に対する意識」は大きく変わった。 「 『これ間に合います か』と納期を意識した発言が出るようになり、何か問題が 起きると『私にできることはありますか』と協力を申し出 る人が非常に増えてきました」 (雲野) 。ただ、まだまだ改 善の余地があるとする村上氏は「計画的に仕事を進める PDCA と、基本中の基本である報連相については、いま だに口を酸っぱくして言っています」と述べる。 また、以前は全員フラットだった組織にはリーダーが育 ちはじめ、会社のあるべき姿についても皆で考えるよう
P コースとは?
P コースとは JMAC が提供している実践型研修プロ 善力を早期に育成する」ために、①現場改善に必要な 手法を IE(Industrial Engineering)中心に修得する 善案検討→改善実施」の改善サイクルを実践し修得す 人達との交流を図ること——を目的としている。 グラムの 1 つで、 「現場で自律的に問題解決ができる改
こと、②「現状分析(改善余地把握)→目標設定→改 ること、③グループでの改善活動を通じて、異業種の 自社の生産現場、実際に稼動しているラインを教材 出し、解決を図ることができるのだ。
にして、JMAC のコンサルタントと一緒に問題点を抽
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