ビジネスインサイツ65
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株式会社片浜屋
働き手不足が加速している近年、多くの従業員を擁する従来型のビジネス モデルは継続しにくくなっている。宮城県気仙沼市のスーパー片浜屋も、 数年前から採用難と人手不足に悩んでいた。そこで 2016 年、片浜屋は 経済産業省の「小売業生産性向上事業」に応募・参加し、少子高齢化時代
「少ない人員で業務を回せる仕組 の生き残りを賭けた挑戦に踏み出した。 とは何か。地方だけではない、国全体が抱える少子高齢化問題を解決する 災を乗り越えて今回の活動へ取り組んだ想い、今後の展望などを伺った。
みづくり」を目指しながら、その先に見据えていた「小売業の新しい形」 ヒントがここにある。株式会社片浜屋 代表取締役社長 小野寺洋氏に、震 代表取締役社長
小野寺 洋 氏
Hiroshi Onodera
を始めて 50 年、前身の乾物屋の時代から数えると 80 年 もの間、気仙沼で商いを続けてきた。 小野寺氏は震災の 2 ヵ月後、2011 年 5 月に代表取締役 社長に就任したが、そのころから人材不足に悩み続けてき たという。 「今、深刻な人手不足が全国で騒がれています が、この地域は震災の影響もあり、5、6 年前から採用難 や人手不足に苦しんできました。当社で募集しても応募す らない状況で、いつもぎりぎりの人数で業務を回していま す。そうした中では 1 人でも欠けると部門の運営が滞り、 お客様へのサービスレベルも下げざるを得なくなってしま う。今のままではいつか、店舗の運営さえもままならない という危機感がありました」と当時の心境を明かす。 こうした中、 「一刻も早く『少ない人員で業務を回せる 仕組みづくり』を行い、スタッフ一人ひとりの負担を減ら すことが最重要の経営課題である」と考えた小野寺氏は、 この課題を解決すべく、経済産業省の「小売業生産性向上 事業」に応募・参加することを決めた。そして今回、経産 省の委託を受け活動を支援したのが JMAC である。 こうして 2016 年 9 月、片浜屋は JMAC をパートナー として、生産性向上に向けた活動をスタートさした。
り、 商品が消費者の手元に届くまでには、 発注や配送、 バッ クヤード業務、陳列・補充・整備、レジなど、いくつもの 作業が発生する。今回の取組みでは、とくに人材が不足し ている「バックヤード業務」の効率化に向けて課題を明ら かにし、いくつかの具体策をトライアルで進めていった。 支援は JMAC のコンサルタント数名で行ったが、代表 を務めたチーフ・コンサルタントの角田賢司は、当初の様 子をこう振り返る。 「初めて店舗を訪れたときに感じたの は、 『一人ひとりに過剰な負担がかかっている』というこ とです。みなさん、とても前向きに一生懸命働かれている のですが、もはや一人のがんばりだけでは耐えきれないと ころまできていました」 そこで、まず行ったのは現場の作業実態をつかむ「現状 把握」だ。日々現場で起きていることが「どういう理由 で」 「どのくらい」 出ているのかを終日観測する。このとき、 店舗全体の効率化を図るため、バックヤード業務だけでは なく売り場業務の観測も行った。 小野寺氏は、 「一緒に取り組んでいく中で、ものごとの 改善には『現状把握』がいかに大切かを改めて認識した」 と語る。今回は国の補助事業のため、短期間でという厳し い条件下での活動であった。小野寺氏はその点にも触れ、 「短期間ということもあり、JMAC には 8 割超もの時間を 『現状把握』 に割いていただいたのではないでしょうか。 『改 革のプロも、ここまで重視するのか』と驚くと同時に、自 分自身はその大切さを認識してはいたものの、果たしてそ
現状把握こそが課題解決の近道 「なぜそうなるのか」を解明する
スーパーには、青果・精肉・鮮魚・レジなどの部門があ
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