ビジネスインサイツ65
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こまで重視していただろうか、 と反省もしました」と語る。 また、 「現地調査の回数は必ずしも多くなかったかと思い ます。その中で各スタッフへの聞き取り調査や作業の実測 などを行ったのですが、短い時間の中でも集中的・科学的 に行えば、ここまで正確に実態を把握できるということに も驚きました。スタッフもみな、 『今まで気づかなかった』 『勉強になった』とかなり好意的に受けとめています」と 述べる。 コンサルタントの角田は「われわれは、しっかりと現状 把握したうえで店舗の方とそれを共有し、両者の思いが一 致する方向性を打ち出せてこそ活動の意味があると考えて います。活発なコミュニケーションをとりながら密度の濃 い活動ができたのは、小野寺社長をはじめ、店舗のみなさ まの熱意があったからにほかなりません」と語る。
でさらなる効率化を図り、少ない人員で業務を回す仕組み をつくり上げていくことは容易ではない」と改めて感じた という。 そして、その実現のためには「マンパワーによる作業効 率の改善だけではなく、 ICT (情報通信&コミュニケーショ ン技術)を活用することが重要である」とし、 「自動発注 やセミセルフレジなどのシステムを最大限活用し、効率的 な運用を追求して初めて最少人員で業務を回せる仕組みづ くりができると考えています。当社でもすでに利用してい ますが、まだ活用しきれていません。これからは『ICT を 使ってどこまで効率化できるか』を考えていきたい」と述 べる。 今後はバックヤード業務を集約化して、マンパワーとシ ステムの相乗効果をねらう構想もあるといい、 「将来的に は、店舗ごとに行っている商品製造を 1 ヵ所に集約化し たいと考えています。そうすれば、まとめ生産が可能とな り生産性が向上するほか、ミートスライサーなどの自動 化設備への投資も 1 つ分ですむため、メリットも大きい。 この場合、各店舗への効率的な配送方法についても併せて 考えていく必要がありますが、突き詰めて工夫していけば 必ず結果を出せると考えています」と述べる。 そして、 この活動を通して一番変わったのは、 自身の「覚 悟」の持ち方であったかもしれないとも語る。 「これらを 実現するためには、手間とコストがかかることでしょう。 われわれ中小企業にとっては大掛かりな改善ではあります が、今後を見据えて結果を出していくためには、覚悟を決 めて取り組むべきであると強く感じています」
抜本改革で生き残れ! 必要なのはコスト投入の 「覚悟」
この事業における JMAC の支援は、 2017 年 1 月にいっ たん終了した。約 4 か月という限られた時間の中ではあっ たが、品出しに使うカートの積載量をアップして、バック ヤードと売り場の往復回数を 25%削減するなど、一定の 成果を得ることができた。小野寺氏は、 「JMAC には、さ まざまな面で改善の提案をしていただき、スタッフ 1 人 当たりの作業負担が大きく軽減した」と評価する。 しかし一方で、 「まだまだ少ない人員で業務を回せると ころまではいっていない」と述べる。スーパーマーケット 業界はその長い歴史の中で、科学的手法を用いて常に運営 方法を改善し、作業効率を向上してきた。ゆえに「その中
脱・小売業の常識 「多能化」で従業員に連休を
片浜屋は引き続き、今回の活動の定着と次なる課題への 対応を進めていく方針である。その中で、 「従業員の満足 度向上」にも取り組む姿勢だ。 「われわれの業界では、今 までは繁忙期にあたるゴールデンウィークやお盆、年末年 始は休めない、というのが当たり前でした。しかし、これ からは年に何回かでもいいから、まとめて休みをとらせて あげたい。こうした部分の改善や、従業員の満足度向上へ の取組みも並行して本気で行う必要があると思っていま
スーパー片浜屋(古町店)の従業員のみなさん。震災の被害を乗り 越え、全員一丸となって生産性向上活動に取り組んだ。小野寺社長 とともに、新しい時代のスーパーマーケットづくりに励んでいる。
す」と、これまでの小売業の常識にとらわれず、ワーク・ ライフ・バランスの実現にも注力していく。
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