ビジネスインサイツ65
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設立:1949 年(昭和 24 年)9 月 1 日 資本金:182,531 百万円(2016 年 12 月 31 日現在) 従業員数:連結合計 31,245 名( 2017 年 6 月 30 日現在) 事業内容:酒類事業、飲料事業、食品事業、国際事業、 その他事業(機能性食品・飼料)
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「経営者は金ではなく、 いぶし銀であれ」 ——アサヒグループホールディ ングスの泉谷直木氏(代表取締役会長 兼 CEO)の言葉だ。いぶし銀 は常に磨いておかないと光らない、すなわちトップに立つ者こそ常に 「自己研磨」に勤しむべしという経営者・泉谷氏の実践哲学だ。さらに、 経営においてもっとも重要なのは「人と企業風土」であると断言する。 「経営者自身の成長がないと、経営改革は成功しない」との信念のもと 改革を推し進めてきた泉谷氏に、厳しい環境下にあるビール事業の事 例を交えながら、企業価値を高める改革への想いとその軌跡を存分に お話しいただいた。
代表取締役会長 兼 CEO
泉谷 直木 氏
Naoki Izumiya
かつてはマスメディアでの広告宣伝が中心でしたが、今は SNS でお客様とダイレクトにつながり、意見交換するこ とが重視されています。こういった時代には「体験」は必 須で、実際に飲んで期待を超えた満足感があり、それを経 て商品を買っていただく時代になったのです。 また、売上が上がらなくなると、営業部門や生産部門が それぞれに勝手なことを言いがちですが、それでは社内で パワーを結集できません。こういうときこそ、会社全体で 「お客様にとって価値のあるものをつくって販売する」と いう共通の価値観を持っていないと買っていただける商品 は開発できません。新しい価値や品質を持った商品が開発 できれば、営業も自信を持って商品の品質を語ることがで き、 「そこを何とかお願いします」というお願い型営業か ら脱却できます。 ですから、私はリサーチ・開発・マーケティング・ファ イナンス・特許の機能をつなげて一気通貫でやろうと言っ てきました。会社全体で新しいものを創造していく組織風 土の中で商品をつくっていけば、まさに営業と生産と研究 開発部門が一体となって事業が進み、生産性も上がると考 えています。
社内の改革をするためには、まず経営側が意識と行動を 変える必要があります。たとえば、グローバル化したい のなら、 「グローバル意識を持て」と言うだけでなく、そ うした経験ができる場を用意するのです。先ごろの M & A でわが社の外国人比率は半分を超えましたが、こういう 環境の中で「現地の技術部門と技術交流する」 「世界中の 事業会社から幹部候補社員を集めて一緒に研修を行う」と いったことを繰り返し行うことで、結果的にグローバル意 識を持てるようになると考えています。 さらに、 「またか」ではなく「あれっ」と思わせる社内 の仕掛けも必要です。当社の株価は経営努力の甲斐があっ て、この 6 年で 3.5 倍になりました。すると「自分の財 産が増えた」 「企業価値が上がっている」と実感し、仕事 に対する意識も変わります。その中で企業価値を高めるた めの 3 ヵ年計画を打ち出せば、 「なるほど企業価値とはそ ういうことか」と理解してもらえるのです。 また、改革は業績に勢いがあるうちにすることが重要で す。傷が小さなうちに素早く対処すれば、問題は大きくな りません。このとき、 できることからするのではなく、 「簡 単にはできないが重要なこと」や「本質に迫ること」をす べきです。もっとメカニズム的にやるべきなのです。 人事政策では、多様化する市場に対応できる強いチーム をつくることが大切です。そのためには画一的な「金太郎
「経営側」の意識と行動を変える アサヒ流・ ト ッ プ主導の社内改革
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