ビジネスインサイツ65
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飴集団」ではなく、 「桃太郎軍団」 、つまりキジ(空から全 体を俯瞰できる) 、サル(木の上を俊敏に走ることができ る) 、イヌ(鼻が利く)のように、個々の能力が社長より 優れている人を結集することが重要です。私が役員に求め たのはそこですし、 最後に全体の責任者である桃太郎は 「キ ビ団子」で成果に報いるのです。そうやってみんなでがん ばって成果を上げる組織になるべきだと思っています。 このようにして、われわれは改革を実践してきたわけで すが、必ずしもすべてうまくいったわけではありません。
きな改革をしようとしても受け入れられないからです。 (3)上司への盲従:部下が本当に理解しているのかを見 極める必要があります。放っておくと改革が始まってから 部下が違う方向に向いてしまいます。 (4)成果なきプロセス:会議や打ち合わせが多く、プロ セスばかりを踏んでいて成果が出ないこともあります。目 的と手段を混同しないことです。 (5)プロセスなき成果:逆に何の議論もしないで、ただ 経営理念を唱和すれば成果が出ると思っているようではだ めです。 (6)言葉の独り歩き: 「危機だ」という言葉が社内でよく 聞かれても、これだけで経営陣が「わが社の危機意識は徹 底している」と判断するのは危険です。言葉が社内を独り 歩きしているだけかもしれません。 (7)拙速:経営計画のスケジュールは重要ですが、現場 社員の実態を無視した進行は結局成功を生みません。 (8)現状埋没:改革で現場がなかなか変わらなくても、現 場社員のせいにしてはいけません。上司自身がやり方を変 えて、今までの倍の力を投じるべきです。 (9)美文:改革にはパワーが必要ですが、美文で埋め尽 くされた通達文書にはパワーが感じられません。コミュニ ケーションは膝を詰めて行うのが一番です。 (10)問題のすり替え:物事を考えるときには、必ず自責 で考えなければなりません。他責では自分の問題を見過ご してしまい、改革につながりません。 以上が失敗から得た 10 の教訓です。次に、これから経 営者を目指す方が、どのようにして成長していけばよいの か、私自身の経験を踏まえてお話しします。
改革できない原因はこれだった 「経営改革 10 の落と し穴」
改革を実践する中で、数々の失敗から得た教訓もかなり あります。ポイントをまとめてお話しします。 (1)実行しない:本社からいろいろな計画や指示が出さ れても現場社員の共感が得られなければ、物事は実行され ません。 (2)経営(上司)不信:経営に対する信頼感や期待感を 日常的につくっておくべきです。これを怠っていると、大 講演後の質疑応答・意見交換より
Q: 「桃太郎軍団」の能力ある人材の育成方法は? 泉谷 : 一例として、 「国内武者修行研修」 と 「グローバル ・
チャレンジャーズ ・ プログラム」 があります。前者では、 社員を他社に 1 年間預かってもらい、 「アサヒの常識 は社外では通じない」ということを経験させて、客観 的な目でアサヒを見ることのできる人材を育成してい ます。後者では、買収した海外企業に入社 1 年半後の をつくっています。
社員を 1 年間送り込み、グローバルに戦える海外要員
Q: 「スーパードライ」開発の背景と、トップブランドで あり続ける理由は? 泉谷:発売 2 年前の 1985 年は業界シェアが史上最低
の 9.6%で、企業存続の危機にありました。このとき
日々の自己鍛錬が重要 「常に明るく元気に、 自分にムチ入れろ」
まず、 「当たり前の基準を高く持つ」 ことが大切です。 「今 の能力で仕事をしていればいい」という感覚では、能力も 低位に安定します。当たり前の基準を上げるコツは、 「知 らない」 「わからない」 「できない」の 3 つを言わないこ とです。そうすると、それをなくそうと一生懸命勉強する ようになります。私は知らないことが増えるのが成長だと 思っています。 忙しくて勉強する時間がないという人がいますが、仕事
業界トップをまねするのではなく、新しい土俵をつく るチャレンジをして誕生したのが、スーパードライで す。業界初の味覚調査を 5000 人に行い、 「お客様が 本当においしいと思うもの」を追求して「コクがある のにキレがある辛口がうまい」という極致にたどり着 きました。現在も次のコアユーザーである若者の調査 を続けており、氷点下の「エクストラコールド」を採 用するなどしています。常にお客様に提案すべき価値 は何かを考え、調査し、実践し続けた努力が今のスー パードライの地位につながっていると考えています。
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