ビジネスインサイツ65
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泉谷 直木
Naoki Izumiya
1972 年 1986 年 2000 年 2010 年 2011 年 2014 年 2016 年
アサヒビール株式会社入社 広報部広報企画課長 執行役員 グループ経営戦略本部長 兼 経営戦略部長 代表取締役社長 アサヒグループホールディングス株式会社 代表取締役社長 兼 COO 代表取締役社長 兼 CEO 代表取締役会長 兼 CEO
とは考えながら、勉強しながらやるものです。考えないで やる仕事は単なる作業です。考えていると学問的なことを 知りたくなるし、よその会社の事例も知りたくなって情報 を探す範囲も広がります。こうして仕事の中で徹底的に学 び、本質を理解していくのです。また、仕事をするとき、 常に第 2 のタイトルを考える癖をつけると、思考範囲が 広がります。たとえば、新聞記事のテーマが健康保険財政 だったら「わが国」は高齢化の問題がある、 「わが社」の 健康支援は、 「私」の日常の運動は……と主語を置き換え て考えてみるのです。 また、 「心技体のバランスを整える」ことも重要です。 若いときには体力勝負で「体・技・心」 、中間層では技術 で勝負して「技・体・心」 、役員クラスになったら心豊か な「心・技・体」と自分でコントロールしなければ成長し ていきません。自分を律するのはなかなか難しいことです が、自分の経営理念やモチベーションを紙に書いて自分の 部屋などに貼り、毎日それを見て繰り返し繰り返しチャレ ンジしていくことが必要です。 経営者になると膨大な量の仕事に優先順位をつけて実行 していくことになります。仕事を定量化して時間計算する ことも必要でしょう。そして状況はどんどん変化しますか ら、大中小 3 つの PDCA の歯車を違う時間軸で速く回し ていくという感覚も必要になります。ここで一番いけない のは、 難しくなればなるほど「ああでもないこうでもない」 と議論ばかりして、打ち手が遅れることです。具体的に取 り組み、成果を出すことが重要です。
また、部下を納得させるのに効果的なのは、指示命令で はなく質問の繰り返しです。なぜを 5 回繰り返せば本心 につながります。私自身も常に自問自答して自分にプレッ シャーをかけています。経営者は、他責ではなく自責で考 える「自立・自律した人間」になり、常に明るく元気に自 分にムチを入れることが大事です。
「絶対に成功させる」 覚悟と信念が自分の立ち位置を決める
そして、 経営者の立場になったときに必要なのは、 「覚悟」 です。社員とその家族の生活を預かる「覚悟」と、そのた めにはより多くのお客様に満足していただけるようなサー ビスを提供していく、絶対に成功させるという「想い」が 自分の立ち位置を決めると考えて、私はやってきました。 さらに、経営者になったら部下を育て、後継者を育てな ければなりません。山本五十六の言葉で「やってみせ言っ て聞かせてさせてみせ褒めてやらねば人は動かじ」という ものがありますが、実は次のような続きがあります。 「話 し合い耳を傾け承認し任せてやらねば人は育たず」 「やっ ている姿を感謝で見守って信頼せねば人は実らず」 。 人が実るように導く、そして生きがいや働きがい、生き 方を含めて満足できる人生を送ることができるようにす る。私はここまでやることがトップである自分の仕事だと 思っています。
本稿は 2017 年 11 月 6 日に開催した JMAC トップセミナーの基調講 演をもとに作成したものです。
講演を聴いて
という言葉は非常に重みがあると思いました。人の育成と企業風土の醸成は経営者に とってもっとも重要な課題であり、経営者の発想転換や意識、行動が大きく影響を与 えるということを改めて認識できました。日々鍛錬を実践していきたいと思います。
JMAC・代表取締役社長
泉
谷会長が実践されてきたことを、自ら語っていただいたので、たいへん説得 力がありました。経営資源の中で一番大事なものは「人と企業風土」である
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