ビジネスインサイツ65
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上や軽量化、燃費向上に貢献している。たとえば、下肢部 衝撃吸収材に採用されている「ピオセラン」は、発泡性・ 剛性に優れたポリスチレンと耐衝撃性に優れたポリオレ フィンの複合発泡体で、衝突時に割れることでエネルギー を横に逃がし、搭乗者を守る。最近では、この「ピオセラ ン」とワイヤーを一体成形する技術で、座席シート部材の 軽量化と組み立て工数の大幅な削減に成功した。 「われわれはこれまで生活分野と工業分野で多くの可能 性を追求し、 形にしてきました。しかし、 当社のプラスチッ クスを発泡させる技術で世の中に貢献できることはまだま だあります。今後は座席シート部材のような他素材との複 合成形品もいろいろな形で展開しながら、多種多様な提案 をしていきたいと考えています」と柏原氏は語る。
ションも必要になってくると語る。 「ウォンツの場合、ど んなものが完成形になるのか最初はまだ見えていません。 われわれがよく知っているのは、 『素材の知識』 『それを発 泡させた機能』 『さまざまな設計を踏まえた可能性』です から、 それをご提案させていただいて、 お客様とディスカッ ションをする中で形が見えてきます」 。ここでは企業秘密 に触れることもあり、 互いの強い信頼関係も必要とされる。 積水化成品のスピード開発は、こうした「ものづくりへの 信念」とこれまで築き上げてきた「顧客との強固な信頼関 係」が礎となっているのだ。
組織の「横断」と「集中」で ソリューションを進化させる
スピード開発で時代の一歩先へ 「お客様と一緒に」つくり上げる
柏原氏は 1983 年の入社以来、技術畑を歩み開発リー ダーとしても活躍してきた。2014 年のトップ就任から 3 年が経つ今、重視しているのは「スピード感」だ。 「事業 環境変化のスピードは年々加速しています。その変化に適 応していくためには、時代のスピードより一歩二歩先に行 くスピード感を持たなければいけない」と語り、そうした 開発をしていくためには「お客様と一緒にビジネスをつく り上げていくことが重要である」と続ける。 「私自身、これまでさまざまなお客様との開発を手掛け てきましたが、 『これは完璧だ』というものを持っていっ ても大概は売れないものです。お客様のニーズやウォンツ を具現化してビジネスをつくり上げていくわけですから、 われわれだけで 100%のものをつくるのはとても難しい。 むしろ、8 割くらいまで詰めてお客様のところに持って 行って『もっとこうしたほうがいい』とアドバイスをいた だきながら一緒につくり上げていくことが重要で、その方 が仕上がりも早いのです。最後の詰めの 2 割に結構時間 がかかりますから、そこをお客様と仕上げていくような形 で進めるのがいいと思いますね。持って行って初めて本来 のご要望が見えてくる可能性もありますから、 『8 割でき たらすぐにお客様のところに行きなさい』と言い続けてい ます」 そして顧客の要望が「こういう機能を持った製品に仕上 げたい」 といったウォンツの場合には、 顧客とのディスカッ
積水化成品では、戦略的なスピード開発をしていくため に 2 つの開発推進体制を敷いている。それが 「CS チーム」 と「事業化推進センター」だ。 「CS チーム」はクロスファンクショナルソリューショ ンチームの略で、組織横断的なチームでソリューション提 案を行う。スピーディーな新市場・新用途開拓、成功事例 の横展開を目的とし、全事業部と全国 9 つの地域代表グ ループ会社が連携してテーマごと、地域ごとにチームを発 足している。 「基本的に、考え方や進め方、扱う商材は同じですから CS チームをたくさんつくり、全国共通のことはみんなで 一緒に、地域特有のことはオリジナリティのある形で行っ ています」 たとえば、新潟や長野の山地で「この農産箱がほしい」 と要望が出れば、同様に涼しい北海道にも適していると考 えて横展開していくのである。 積水化成品のスゴイ技術① 2つの特性をハイブリッド化̶̶ピオセラン
ピオセランは、独自のポリマーハイブリッド技術で耐衝撃 性や耐摩耗性に優れたポリオレフィンの特性を付加させた発 砲樹脂。発砲ポリプロピレンに対して圧縮強度は約 20%向 上したうえに寸法安定性も高く、精密 かつ複雑な設計にも対応できるように なった。 包装材だけでなく、今や乗用車のド アパッド、バンパーの芯、嵩上げ材、 下肢部衝撃吸収材などに使われ、供給 もグローバル規模で展開、さまざまな 用途への応用が期待されている。 写真提供:積水化成品
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