ビジネスインサイツ66
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大建工業株式会社
熱心な改善活動で一度は成果が出るものの、 モチベーションが維持できず、 定着には至らない——改善活動に取り組む企業が一度はぶつかるであろう を打開すべく 2012 年に TPM を再導入し、活動を刷新した。5 年が経っ “ マンネリ化 ” の壁は、思いのほか高い。大建工業・三重工場は、その壁 た今、三重工場の人・設備・組織は大きく変わり、業績も順調に伸長して スパイラルアップし続けている秘訣はどこにあるのか。生産現場における 改善マインドの育成方法を中心に、活動への想いと今後の展望を伺った。
いる。悩みの種だった “ マンネリ化 ” を解消して活動を定着させ、さらに
▲住空間事業部 三重工場で。金田正樹氏 (前列右) 、小野世生氏(同左) 、山村文 明氏(後列左) 、中道卓志氏(同右)
「目からウロコの TPM」 幹部を鍛え直して再発進!
TPM 導入を決めたのち、まず行ったのは「幹部の鍛え 直し」だ。小野氏は「今までの改善活動では、 『さあ今日 からやりましょう』と言っても、メンバーもリーダーもそ の上司も、みんな同じようなレベルでした。それがすぐに マンネリ化する原因だと考え、導入にあたっては活動を 引っ張る立場の人間に『TPM とはどういうものか』を徹 底的に学ばせました」と説明する。 実際に JMAC の TPM カレッジコースに通った山村氏 は「最初は『知っていることなのに、なぜ講習を受けなく てはいけないのかな』と思っていました。それまで独自に やっていた TPM のイメージでいたので、 『自主保全だけ』 という考えで行ったのですが、ロスは生産現場だけではな く管理・間接部門なども含めた工場全体で考えるべきであ ると改めて認識しました」と語る。こうして導入準備に 1年をかけたのちの 2013 年 6 月、三重工場は本格的に TPM をスタートした。 活動のスタートにあたり、まず行ったのは推進体制の整 備だ。 「自主保全」 「品質保全」などの活動ごとに 6 つの 部会をつくり、リーダーが現場から選んだメンバーに教育 していく。 これとは別にリーダー全体の推進部会も設けた。 そしていよいよ迎えたキックオフの日——入念な準備 をしてきた上層部の思いとは裏腹に、メンバーたちの反応
は「これまでも改善活動をしてきたのに、またやるの?」 というものだった。しかし彼らは、その 3 年後に始まっ た事例発表大会(大建工業グループ小集団活動事例発表大 会)で改善事例が評価され、全社で第 1 位を受賞するま でになった。いったい、この日から今日までの間に、三重 工場ではどのような活動をし、その中でメンバーたちはど う変わっていったのであろうか。
「一緒にやる」 「時間をとる」 がメンバーの心と体を動かす
当初、モチベーションを持てずにいたメンバーの動きは 停滞しがちで、活動は思うように進まなかった。そこで山 村氏は、自分たちが率先して動くことで彼らの動きを促し ていったという。 「たとえば自主保全部会では、 最初に我々 が設備を点検・清掃して見せて、 『初期清掃はこうするん ですよ』と教えるのです。メンバーのモチベーションを上 げるために、とにかく『一緒にやる』 『繰り返し言う』こ とを徹底しました」 また、生産現場の活動時間を確保するため、月に 1 回、 機械を止める時間を設けるようにした。 「改善活動では 『や りなさいと言われても時間がない』というのが現場の意見 ですから、工場長に『1 ヵ月に 1 度だけ機械を止めさせて ください』と交渉し、時間内に少しでも活動できるような 体制をつくりました」 (山村氏)
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