ビジネスインサイツ66
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設立:1917 年 9 月(創業 1875 年 3 月) 資本金:約 266 億円(2017 年 3 月期) 従業員数:グループ合計 11,528 名(2017 年 3 月 31 日現在) 事業内容:分析機器、計測機器、医用機器、航空機器、産業機器の 開発・製造・販売
「科学技術で社会に貢献する」― ―島津製作所はこの社是のもと、142 年にわたりイノベーションに取り組み続けてきた。 「企業は長く存続 して人々に働きがいの場を提供するとともに、人そして社会に役立つ ものを提供し続けなければならない」とする中本晃氏(代表取締役会 長)の言葉には、事業継続と新価値創造への熱い想いが込められてい る。 イノベーションの創出に求められるものは何か。 事例を交えながら、 企業におけるイノベーションの重要性、そして人材育成と組織運営の あり方についてお話しいただいた。
中本 晃 氏
したが、 それ以降から現在にかけては、 「事業のポートフォ リオの見直し」と「選択と集中」を行い、事業の集約を図 りました。そして、2002 年からは戦略機種への重点投資 でイノベーションを一気に加速させました。ここでは、当 社事業の中で最も長い歴史を持つ「医用機器」と、当社事 業の最大の柱である「分析機器」についてお話しします。 2000 年、医用機器事業は赤字に転落しました。企業規 模に見合わない機種拡大が、開発技術者の不足を招いたこ となどが原因です。そこで 2002 年、歴史があって技術の 上でも強みが発揮でき、かつ今後新興国でも大きな需要が 見込める X 線事業へ集中することを決断し、MRI などか らは完全撤退しました。ほぼすべての技術者を X 線事業 に投入し、画質・品質・独自性で「世界一の X 線」を目 指すことにしたのです。 その結果、2003 年には世界で初めて直接変換方式 X 線 平面検出器(FPD)の開発に成功し、2005 年には可搬型 FPD を搭載した院内回診用 X 線装置を世界で初めて製品 化しました。これは北米で当社最大のヒット商品に育って いきました。こうした特徴ある X 線装置を市場に投入し 続けることで、現在の売上高は約 650 億円となり、赤字 転落前の最高売上高を上回るまでに成長しています。 分析機器は、各種産業の発展に大きく貢献することで 共に成長発展してきました。そして、分析機器の市場は、 1990 年代後半から医薬・食品・ヘルスケアといったライ フサイエンス分野を中心に大きく拡大してきましたが、当 社はこの分野で必要とされる質量分析装置について大きく 出遅れていました。そこで 2002 年頃、当社が強みを持つ “ タンパク質の構造解析 ” に威力を発揮する質量分析装置 開発への重点投資を決断し、開発技術者の増強や外部研究 機関との連携強化などを行いました。 その結果、 2004 年には 3 モデルだった質量分析装置は、 現在では 9 モデルになり、クロマト分析装置全体の売上 高も 490 臆円から 1100 億円と 2 倍以上に拡大すること ができました。この重点投資の中で開発したイメージング 質量顕微鏡と超臨界 SFE/SFC システムは、世界初かつオ ンリーワンの製品であり、産学官連携の大きな成果と言え るでしょう。 このような 2002 年の決断が大きな変化を生み出し、2 つの事業の成長につながりました。それでは、こうしたイ ノベーションの創出には何が必要なのでしょうか。次は、 2 代目島津源蔵とノーベル化学賞を受賞した田中耕一シニ アフェローを例にとって、革新的な技術を生み出す研究開 発についてお話しします。
代表取締役会長
革新的技術を生み出す “ 原動力 ” は何か 2 代目源蔵と田中耕一氏の共通点
2 代目源蔵は、 鉛蓄電池用鉛粉の大量製造法の発明により、
Akira Nakamoto
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