ビジネスインサイツ66
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し続けていた。 「われわれを育ててくださった北海道在住 のお客様に、かつてのような強い支持を得られなくなった のは大きな問題でした」 2 つ目は「原点に立ち返るため」だ。 「これまで規模を 拡大する過程で、十分に目が行き届かなかった社員一人ひ とりの想いや組織のあり方、そして何よりもお客様の気持 ちに寄り添ったサービスができているかについて、原点に 立ち返って見つめ直すべきだと考えました」 3 つ目は「安全行動指針と両輪となるような行動指針を つくるため」だ。 「安全」と「顧客満足」は AIRDO の事 業運営上の両輪で、 その行動指針も重要な位置づけにある。 しかし、当時は「安全行動指針」が浸透している一方で、 「AIRDO Style」は複雑で十分に活用されていなかったと いう。 「そのため、安全行動指針と両輪となるような、わ かりやすい行動指針をつくりたいと考えました」
また、若手中心の CS リーダーにこうしたプロジェクト の経験者がいないことも関係していた。時間をかけて検証 することで、 「実態はどうなっているのか」 「これはそもそ もどういう意味でつくったのか」などの共通認識を持って 議論ができるようになった。 草野氏は 「いきなり議論に入っ てまとまらなくなるリスクを感じていたので、最初に基本 的な方向性を決めてから議論に入るということはかなり意 識しました。策定の実質的な議論をする前に、 CS リーダー たちが『行動指針はこうあるべきだ』というところを認識 できたのもよかったと思います」と述べる。
経営層からのアドバイスで再検討も 一言一句を吟味し、想いを込める
方向性が決まった後は、策定のための討議に入った。こ こでは、CS リーダーが提出した案を CS 向上推進会議に 提示し、経営層で議論をしてアドバイスするという方法を とった。 最終的に策定された CS 行動指針は次のとおりだ。 【CS 行動指針】
なぜ定着しなかったのか
時間をかけて徹底検証する
そこで、策定にあたっては外部の支援を受けることに決 め、選択の際には 4 つの点で評価したという。 「1 つ目は プロジェクトへの 『熱意』 、 2 つ目はわれわれの想いへの 『理 解度』 、3 つ目は当社との役割分担がイメージしやすいか、 経験豊富なコンサルタントが責任を持って取り組んでくれ るかという『進め方』 、 4 つ目は『他社事例の経験数』です。 この 4 点について数社から企画書をいただいて、総合的 に判断して JMAC を選びました」 こうして 2016 年 7 月、 AIRDO は JMAC をパートナー として新たな CS 行動指針の策定に乗り出した。 プロジェクトは、各部門から選出された CS リーダー 19 人で進めることになった。策定にあたりまず行ったの は、当時の「AIRDO Style」の検証だ。全社員へのアン ケートや顧客満足度調査を実施したうえで、なぜ浸透しな かったのか、 内容的に妥当なのかを 2 ヵ月かけて検証した。 検証に時間をかけた理由について、JMAC の蛭田潤(シ ニア・コンサルタント)はこう説明する。 「新しい CS 行 動指針を策定する前に、 『もともとあったものがなぜ定着 していないのか』といったメカニズムも含めて見ていかな ければ、 せっかくいいものをつくってもまた忘れられたり、 定着しなかったり、ということになりかねません。そのた め、検証に重点を置きました」
■お客様のために、
高い志と情熱を持ち、 自分ができることを考え抜いて行動します。 強いチームワークで、 期待を超える満足を創造します。 北海道の翼として、 新たな価値の実現に挑戦し続けます。
この中で、まず論点になったのが「行動指針の対象は誰 か」だ。 「世の中の経営論ではすべてのステークホルダー に使命を果たしなさいと言われていますが、わかりやすい 行動指針にするために、対象をお客様に限定しました。こ れがひとつはずみになって、 大きな方向性が決まりました」 (草野氏) 次に論点となったのは、 「社員全員が共感できる言葉選 び」 だ。お客様と直に接しない事務系や整備系の社員にも、 顧客満足を意識してほしかった。そこで、特定の部門の仕 事を想起させる文言は入れず、さまざまな場面・職種で使 える「自分ができることを考え抜いて行動する」とした。 もうひとつ論点になったのは、 「北海道の翼」という言
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