ビジネスインサイツ67
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大日精化工業株式会社
「個人プレー」から「チームプレー」へ――大日精化工業・ ファインポリマー事業部は 2015 年 11 月、技術体制の強 化を目指し、技術 KI を導入した。活動開始から 3 年目を
迎えた今、技術者の意識と行動は変わり、組織も大きく変 わり始めている。技術 KI を通じて開発現場はどう進化し ていったのか。未来を見据え、10 年後を支える若手技術 展望を伺った。 たのか。 そして、 組織間の高い壁をどのようにして取り払っ 者の育成にも乗り出した同事業部の、活動の軌跡と今後の
ファインポリマー事業部 技術統括部 統括部長
佐藤 浩正 氏
Hiromasa Sato
ようになりました」と振り返り、 「それまではわれわれの 方で研究テーマの振り分けをしていましたが、 面談では 『何 がしたいか』 『そのためにはどうするのか』 『1 年後はどの ような形になっていたいか』といった問いかけをして、 『自 分で目標を決めて、そこに向かってガンバっていく』とい う形にしていきました」と説明する。その後、彼らはどう 変わっていったのか。福井氏は「少なくとも、指示を待つ 状態はなくなりました。最近では、 『ここまでできました』 『ここからはできませんでしたが、こう考えています。こ れでいいですか』という打ち合わせができるようになって きました。自分のやりたいことを宣言し、それに対して向 かっていくことで、個人の責任を持つようになってきたの かなと思います」と語る。 技術統括部第 2 部 部長の廣瀬正純氏は、 「最初は、若 手にどこまで仕事を任せるかが非常に難しかった」と振り 返る。そこで、業務をばらして見えるようにし、合意と納 得をしたうえで、どんどん業務を任せていったという。そ の場では口を出さず、 後でフォローするという方針をとり、 時には我慢を重ねることもあったが、 「彼らは技術 KI で確 固たる方針と根拠を持つようになったので、今では自信を 持って『ここをやっていないから、ここをやりましょう』 と言えるようになりました。リーダーとして育ってくれた なと思います」 (廣瀬氏) 佐藤氏が彼らの成長を強く感じたのは、 「朝礼と夕礼」 で各人が報告している姿を見たときだったという。 「各人 が YWT(Y:やったこと、W:わかったこと、T:次にや
ること)を明確に報告できるようになりました。以前は夕 礼などやっていませんでしたし、朝礼もおはようで終わっ ていたので、こんなに進化するものかと驚いています」 。 また、技術 KI を通じて技術者たちが「自覚」と「覚悟」 を持つようになってからは、 組織も大きく変わったという。 「とくに若手技術者が自分のやるべきことを明確にして取 り組み、近くに困っている人がいたら助けてあげるなど、 組織内で責任ある行動がとれるようになってきました。や はり根底には『ものづくりで社会貢献したい』という思い がみんなにあって、個人も組織も成長して双方のイノベー ションが進んできていると感じます」 (佐藤氏) JMAC チーフ・コンサルタントの星野誠は、 「自覚と覚 悟をみなさんに持っていただきたいというのが 2 年目の 1 つの焦点で、それが目に見えて風土になってきたところは 素晴らしいですね。 一人ひとりが変わりましたし、 リーダー やマネジャーなど、それぞれの階層の役割意識もかなり変 わってきたと思います」と語る。
福井 克幸 氏 (ファイン ポリマー事業部 技術統 括部 第 1 部 部長)
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