ビジネスインサイツ67
- ページ: 15
- 15
SEC カーボン株式会社
改善活動においては、時として活動の真の意味が理解されず、なかなか動 京都工場でも、コスト削減プロジェクトにおいてこれまでに経験のない新 3 年目の現在では自走化が進んでいる。いったい、何がメンバーたちをこ き出さないメンバーたちに頭を抱える企業も少なくない。SEC カーボン・ たな取組みに戸惑いながらのスタートを切ったが、次第に積極的になり、 こまで変えたのか。そして、全社的な取組みを目指す中で、工場で「自分 のところは自分でやる」ことが習慣となっていたメンバーたちはどのよう に変わっていったのか。今回、活動の軌跡と今後の展望を伺った。 代表取締役社長
中島 耕 氏
Koh Nakajima
どを通じて現状を分析した結果、約 5 億円のコスト削減 が可能と見込まれた。実際の活動では、購買、保全、電力 など、 コストダウンの切り口ごとに 6 つのチームを編成し、 チームリーダーが中心となって進めていくことにした。 こうして本格スタートしたプロジェクトであったが、メ ンバーはみな、 「 『またやるの?』という面もあった」と語 るのは泉司氏(執行役員 京都工場 技師長)だ。ちょう どそのころは、コスト削減のほかにも複数のプロジェクト が動き始めた時期で、活動を掛け持ちしているメンバーが 多かったのだ。 そのうえ、 工場では工程ごとに仕事が決まっ ていることから「自分のところは自分でやる」という慣習 が根付いており、組織横断的な活動にはなじみにくいとい う背景もあった。 しかし、スタートから 3 年目に入った今では、メンバー の意識と行動は大きく変わり、着実に成果を出し続けてい る。当初打ち立てた社内目標の「2 年間で 3 億円のコスト ダウン」はすでに達成し、現在は新たな目標に向かって邁 進しているところだ。逆風の中で始まったこのプロジェク トは、いったいどのような経緯でここまで大きな変化を遂 げたのであろうか。
活動が軌道に乗るきっかけとなったのが、チーム同士の 「相互刺激」だ。先陣を切ったのは購買コストダウンチー ムで、ここでは主に工場で使う消耗品や工具を調達してい る。それまでは 1 社購買だったが、2 社購買にして競争購 買を行い、購買価格の低減に成功した。1 社購買の時代に は要求仕様書を作成していなかったため、メンバーたちは その作成方法を習得し、競争購買に臨んだ。当初、新たな 取組みに戸惑いのあったメンバーたちは、成果が目に見え るようになってからは積極的に取り組んでいった。 その様子を見て次に動き出したのは、保全チームだ。そ れまでは設備の修繕を外注していたが、内製化を進めて修 繕費の低減に成功した。当初は工作や溶接などのスキルを 持つメンバーが自分の職場の設備を修繕していたが、2 年 目に入るころには、そのスキルを駆使して自分の職場以外 の設備も修繕するようになっていった。 この間のメンバーの変化について泉氏は、 「最初はみん なバラバラで動いていましたが、集まって半年ぐらいやっ ていると少しずつ成果が出始めたので、活動に対する理解 が徐々に深まり『みんなで協力してやっていこう』という 雰囲気になっていきました」と振り返る。 JMAC のコンサルタント吉川太清は、 「最初はなかなか メンバーが動いていない状態があったのですが、中島社長 の説得で活動の真の意味を理解したメンバーが動き出すと 他のメンバーも動き出し、成果が出てよく回るようになり
「他人ごと」 から 「自分ごと」 へ 納得感が人を動かす
- ▲TOP