ビジネスインサイツ67
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ました」と振り返る。 こうして、 「他人ごと」 のように捉えられてなかなか軌道 に乗らなかった活動は、 「自分ごと」 としての活動に変化し、 さらにはチームで力を合わせて成果を出すまでになった。
に全員参加でプロジェクトの成り立ちや活動内容をまとめ てもらい、これにあわせて社長や工場長のコメントも掲載 している。その目的は、社内での情報共有はもちろんのこ と、 メンバーの活躍する姿を家族に届けるところにもある。 機関紙を自宅に持ち帰り、 家族から「がんばっているね!」 と言ってもらえることが何よりの喜びであり、一番のモチ ベーションになるとの考えからだ。そのため、できる限り 多くの写真を掲載するよう心がけている。こうした事務局 による地道な盛り上げ活動により、全社的な活動はさらに 加速していった。
全社で活動を共有し、 部分最適から全体最適へ
プロジェクトは、従前より注力してきた電力費低減の活 動も加速した。炭素質の黒鉛化の過程では 2000℃以上の 熱処理を要するが、SEC カーボンでは焼成品に直接通電す るジュール加熱の方法を採用し、3000℃近くまで温度を 上げている。これにかかる電力費は膨大かつ製品原価に占 める割合が大きいため、 その低減はコスト削減に直結する。 プロジェクトの中では、より短時間で通電できる送電方 法を開発したり、電気料金の安い夜間帯で集中的に稼働し たりして、試行錯誤の末に大幅なコスト削減を実現した。 工場長の田畑洋氏(執行役員 京都工場長)は、 「黒鉛化 電力の削減については、以前より技術委員会が地道に取り 組んできました。しかし今回、プロジェクトの中の 1 つ のテーマとして取り組んだことで意識が切り替わり、活動 を加速できたと感じています。改善には多角的な視点を要 するため、そこが難しいところでもありますが、大きな成 果が出たときには達成感がありますね」と語る。 こうして、プロジェクトを通して人と組織が変わり、技 術面での成果をも生み出していった。また、最初こそ組織 横断的な活動に慣れないところがあったが、次第に「全社 的な動きとはこういうものなんだな」と理解し始めてから は、急速に自律化が進んでいったという。 この全社的な活動を盛り上げたのが、事務局(経営企画 室) が発行する機関紙だ。 プロジェクトに関わっている人々
岩井清一氏(執行役員 経営企画室長)
3 年目は体質強化を目指す カギは 「自律」と 「継続」
2015 年にスタートしたプロジェクトは、今年で 3 年目 に入った。市況の回復とともに生産量が大きく伸び始め、 コストダウン活動もすでに自律可能となったことから、現 在は次のステージである体質強化へと活動をシフトしてい る。装置産業である同社は設備強化に注力しており、保全 スキルや設備エンジニアリングスキルの向上を図っている ところだ。 今後の展望について、経営企画室長の岩井氏は、 「今ま では『過去はこうだったからこのようにやっています』と いうやり方が多かったのですが、このプロジェクトで『な ぜそうするのか』というロジックを繰り返し考えるように なり、組織も大きく変わりました。経営陣への説得材料を 自分たちで集められるようになったことも大きな変化でし た。コストの削減は永久の課題ですから、今進めている自 主展開を継続し、今後も自分たちで毎年目標設定をして削 減していくことが必要です。体質強化に関しては、保全ス キルなどをよりレベルアップできるような形で継続できる ように進めています」と語る。 技師長の泉氏は、 「最初は『自分はこの仕事だけやって いればよい』 というところがあったのですが、 このプロジェ クトの中で横のつながりができて、 『自分たちの世界だけ ではなく周囲も見ていこう』という流れができたところが とてもよかったと思います。また、物事を進めるうえで、 私たちではなかなか話が通らないことでも JMAC さんだ とみんなが話にのってくれました。お墨付きをもらうと仕 事が進みやすいので、そういうところは引き続きお願いし たいと思います。ただ、いつまでも見ていただけるわけで
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