ビジネスインサイツ67
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設立:2006 年1月 資本金:45,591 百万円(2018 年 3 月現在) 従業員数:連結 49,589 名 単独 11,763 名(2018 年 3 月 31 日現在) 事業内容:ステアリングシステム、軸受、駆動部品、工作機械、電 子制御機器などの製造・販売
電動パワーステアリングの世界トップシェアを誇るジェイテクトは、 2006 年、光洋精工と豊田工機が合併して誕生した。安形氏は 2013 年 の社長就任以来、トップマネジメントを担ってきたが、そこには自身 がトヨタ自動車時代に学んだ教訓が色濃く反映している。トヨタ生産 方式、経営戦略、コミュニケーションの極意など、その 1 つひとつが 管理職の心得、経営者が持つべき視点に至るまで、エピソードを交え 余すことなくお話しいただいた。
Tetsuo Agata
実体験を通して得た貴重な教訓となった。新人時代の失敗談に始まり、
安形 哲夫 氏
だ?」 おじさんでした。 これはよくするたとえ話ですが、 「機 械が壊れました」 「なんで壊れた?」 「機械を駆動している モーターが焼きつきました」 「なんで焼きついた?」 「モー ターを駆動しているオイルポンプが詰まりました」 「なん でオイルポンプが詰まった?」 「オイルが汚れていました」 「なんで汚れた?」 「オイルをきれいにするオイルストレー ナーが破れていました」 。ここまで来て「トヨタにはもと もと定期的にオイルの清浄度をチェックする仕組みがな かった」という真因にたどり着くわけです。真因まで辿り 着かないで対策をやっていると必ず再発しますから、真因 を追究する文化、習慣はとても大事です。 3 番目は、 「カローラが 500 万円にならない理由」です。 生産企画部で、ジェイテクト初代社長の田さんが係長、 私が平社員の時の話です。ある日、田さんに呼ばれてこ う言われました。 「現場には 9 割の理があるが、現場の言 うことをそのまま『そうですね、たいへんですね』と聞い ていたら、今ごろカローラは 500 万円になっとるぞ。現 場には『そうは言っても、こうすべきだ』と押し返せ。そ れをやっているからカローラはいまだに 150 万円ででき るんだ」 と。ここまでは割とわかりやすい “ べき論 ” です。 ここからまだ先があります。時の田係長は 「だけどな、 現場が本当に困っているときには、現場が泣いてくる前に 行って助けてやれ。それができたら現場のお前に対する信 頼は盤石なものになる。いつもはお互いの主義主張から綱 引きをしているが、本当に困っているときには絶対に助け てくれる。そういう管理者になれ。だから現地現物で、毎 日足すり減らして現場をまわれ。誰よりもよく現場を理解 していなかったら、マネジメントできないぞ」と。これは 厳しく言われました。もちろん、今でも守っています。時 間を惜しみ、 1 つでも多くの現場に行くようにしています。
取締役社長
笑顔の 「儲かっとるかね ? 」は 綿密なス トラテジー (戦略)
4 番目は、 「儲かっとるかね?」です。入社 6 年目の時 にトヨタ自動車工業とトヨタ自動車販売が合併して、私は 合併後の第 1 期生で車両の営業部に配属されました。そ この部長は販売店さんが来るとニコニコしながら「儲かっ とるかね?」 「儲けにゃいかんよ」と言うわけです。そし て実際、われわれが儲かっていない販売店さんに張り付い て、一生懸命に経営改善をやっていたら、3 年後には販売 店全体で史上最高益が出ました。 これを部長に報告すると、 「大至急、販売店向けの節税 策を考えろ。来週みんなを集めるから」と言われたので、 税務の本を読みまくり、急ごしらえで節税マニュアルをつ くりました。 結果、 販売店の手元には純利益がしっかり残っ た。すると部長はこう言ったのです。 「この儲けたお金の 使い道は 2 つだけだ。借金を返すか、店舗をきれいにす
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