ビジネスインサイツ67
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るための投資をするか。それ以外は認めない」 ここに至って初めて、やっと部長の真のねらいがわかっ たのです。ニコニコして「儲かっとるかね?」と言いなが ら、実はストラテジー(戦略)があった。預かった販売店 をきちっと財務的に強くして、販売力のあるディーラー群 に仕立てるためには何をしなければいけないか。それを最 初から言ったのではダメで、 「儲かっとるかね?」と言っ ていたわけです。このとき、ストラテジーを持たない経営 はない、ということを肌で学びました。 こうして話していますが、昔は割と無口で、どうしたら販 売店さんとうまくやれるのかな、などいろいろと悩んでい ました。そうしたら上司にこう言われたのです。 「性格を 変えようなんて、そんな大それたことを考えるな。だけど 行動は変えられる。だから、 『あの人いいな』と思う人の 言動を見て、 マネをしろ。それをずっと繰り返していけば、 そのうち板につくから心配するな」 と。 まだ 30 歳前後だっ た私にとってはコペルニクス的転回で、 「ああそうか。マ ネして行動を変えればいいんだ」と思った瞬間、胸のあた りがとても楽になったのを今でも覚えています。 次は 6 番目、 「 『それで?』 聞き上手の言わされ専務」 です。 これも営業時代の話で、国内営業担当の専務に学んだこと です。 その人は部下の話をとても真剣に聞いてくれる人で、 相手の目を見てうなずきながら、 「なるほどね、僕には専 門外だからよくわからんのだけど、 そうなってるの、 へぇ、 なるほどねぇ。それで?」と聞いてくるのです。これが危 険極まりない。この調子でみんな話を引き出されて、全 部話してしまうわけです。 「問うに落ちずに語るに落ちる」 とはこういうことか、と今にして思いますね。 だから私も、部下と話すときには目線を合わせて「で? へぇ、そうなんだ、へぇ」とか言いながら一生懸命マネは しているんですよ。でもあの域には達せられないですね。 ヒアリング力というのはコミュニケーションの第一歩です から、諦めずに努力していきたいと思っています。
魅力的な人を見つけたら マネをし て自分のものにしろ
5 番目は、 「性格なんぞ変わらん。だけど行動は変えら れる!」です。これも営業のときの話です。私は今でこそ 先人十訓②
其の五:可変行動 性格なんぞ変わらん。 だけど行動は変えられる! 其の六:発言促進 「それで?」聞き上手の言わされ専務 其の七:情理尽力 女房を口説いた時のことを思い出せ! 其の八:悪報迅速 まあそこへ座れ! 其の九:観察熟考 大野さんは答えを教えてくれなかった 其の十:自問真価 競争力はあるのか?
講演後の質疑応答・意見交換より
Q:営業部門の生産性や営業力を高める方法は? 安形:ビジネスフローの整理、面当たり営業、引き継
げる体制づくり、の 3 つを実践しています。モノや情 報の滞留をなくすため、仕事の内容と情報の流れを可 視化することは大事です。 「面当たり営業」とは、お 客様のトップには私が、次の営業本部長に対しては営 で当たることを言います。情報源が一人だけだと、 「技
マネジメン ト成否のカギは コミュニケーショ ンにある
7 番目は、 「女房を口説いたときのことを思い出せ!」 です。営業から生産に戻って課長になったとき、上司にま ず言われたのは、 「君たちは『部下と対等なコミュニケー ションを心がけます』などと言うけど、そんなに簡単なも のじゃない。ポジションパワーを意識しなきゃダメだ」と いうことでした。 「べき論だけでは人は動かない。とくに 下の人間に向かっては、女房を口説いたときのことを思い 出せ。 『こんな話をしたらどう思うかな』とか、あのとき ほどコミュニケーションにエネルギーを使ったことはない だろう?」と。 この話は、私も昇格辞令を渡すときに必ずしています。 「昇格したのだから、今まで以上に部下にハンデを与える ようにしてください」と。そのようにしない限り、とくに 下に対するコミュニケーションはできませんから、かなり
業本部長が、というように上から下まで各階層に「面」 術部長が反対していたのを知らず、後で結論がひっく で営業情報を取ることは大事です。また、こうした体 制をつくっておけば、いずれ私や先方のトップがいな くなっても、次につながっていくのです。
り返ってしまった」ということもあり得るので、 「面」
Q:安形社長にとってのトヨタの文化、DNA とは?
安形: 「5 なぜ」で真因の話をしましたが、もう 1 つ大
事なのは「そもそも何のためにやっているんだ」と真 の目的を追究することで、それらに対する執着力は相 を徹底的に追究する、というところが強みであり、文 化、DNA なのかなと思います。 当強いと思っています。ですから、 「真因」 や 「真の目的」
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