ビジネスインサイツ68
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経営基盤の強化に向けたさまざまな取組みについて、
JMAC が支援した事例を紹介します。
〜「設備故障 93%減」への道、その 10 年の記録〜
TPM は 「人づくりの柱」 全員参加で10年後の姿をつく る
「故障を減らす」 工場の命題を TPM で解決
三菱ケミカルは 2017 年 4 月、三菱化学・三菱樹脂・ 三菱レイヨンの 3 社の統合により発足し、素材から機能 商品まで幅広いフィールドで事業を展開している。 今回取材で訪れた豊橋事業所には、旧三菱レイヨンの工 場がある。その広大な敷地面積は東京ドーム 10 個分にも 及び、 今から 57 年前の 1962 年 (昭和 37 年) に創業した。 ポリプロピレン繊維の製造からスタートした工場は、その 後、炭素繊維(写真) 、中空糸膜、アクリル樹脂フィルム と事業を順次拡大し、今では 4 つの事業を展開する工場 となった。 製造現場の生産性を上げるためには、 「いかに設備の故 障を減らし、ラインの停止を防ぐか」が重要となる。その ため、豊橋事業所では昔から、さまざまな故障削減の改善 活動に取り組んできた。しかし、その成果も次第に下げ止
◀炭素繊維(ポリアクリロニ トリル繊維を高温焼成する ことで、金属材料を凌駕す る強度を持つ。軽量で強靭 な素材として、産業資材、 航空機、人工衛星、自動車、 スポーツ用品、環境分野な ど幅広く展開されている) 写真提供:三菱ケミカル
まってきたことから、2009 年、JMAC 支援のもと TPM (Total Productive Maintenance)を本格スタートした。 TPM は、製造企業の持続的な利益確保のために、継続的 に人材育成や現場改善を実施する仕組みをつくる。 本活動を主導してきた宮森隆雄氏(執行役員 豊橋事業 所長)は、1999 年から豊橋事業所の製造部で故障削減活 動に取り組んでいたが、途中 2007 年から 2011 年まで 他の事業所にいたため、TPM が始まった当初は参画して いない。だからこそ「2012 年にここに戻ってきたとき、 TPM がかなり軌道に乗っていたので驚いた」と振り返る。 活動開始から 10 年が経った今、故障件数は当初の 14 分の 1 にまで激減した。いったい、この 10 年間でどのよ うな取組みをしてきたのであろうか。
「私つくる人、あなた直す人」から 「自分の設備は自分で守る」へ
活動当初の様子について、TPM の立ち上げを工場で経 験し、現在は事務局を務める品田勝彦氏(企画管理部 も のづくり力強化 G グループマネージャー)はこう語る。 「最初の頃は、オペレーターは『設備のトラブルがあった ら保全を呼べ』という感じで、 『私は動かす人で、壊れた ら直すのが保全だ』という意識が強く、トラブルもロスも 多かった」
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