ビジネスインサイツ68
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三菱ケミカル株式会社
三菱ケミカル・豊橋事業所は 2009 年、TPM 活動を本格スタートした。そ の後、地道な活動を続け、この 10 年で設備の故障件数は 14 分の 1 に激 減した。その背景には、 「オペレーターと専門保全員の二人三脚」 「製造部 長と課長の活動をクロスさせる」といった独自の取組みがあった。それら はどのように行われ、そのとき人はどう変わっていったのか。息の長い活 動を続ける秘訣とは。そして昨年、 次世代の担い手を育成する「保全道場」 がスタート、新たな挑戦が始まった。今回、10 年にわたる活動の軌跡と 今後の展望を伺った。 執行役員 豊橋事業所長
宮森 隆雄 氏
Takao Miyamori
この場合、 「壊れたら直す」 ではなく 「故障を未然に防止」 できれば、故障を減らすことができる。そのために行うの が、オペレーター自身が設備の清掃・点検を行う「初期清 掃」だ。TPM ではこうした活動を「自主保全」と呼ぶ。 実際の活動では、品田氏を含む管理職がまず「初期清掃 とはどのようなものか」を体験し、それをオペレーターに 教えていった。当初、メンバーの反応は「また新しい活動 をやるの?」 というものだったが、 徐々にその意識は変わっ ていったという。品田氏は、 「みんなで初期清掃をやって、 汚れていた設備をキレイにして、不具合を発見できるよう になったことで、大きなトラブルになる前に気づけるよう になったのは非常に大きな成果でした」と語る。 宮森氏は、一歩踏み込んだ初期清掃から入って、徐々に 装置に詳しくなり、意識が変わっていったところが非常に よかったと述べる。 「もともと 『製造の人はつくるだけ』 『故 障は保全の人が対応する』ということが長年の文化になっ ていたので、最初にそこの意識の切り替えと覚醒ができた のは非常に大きかったと思います」
ターの報告を受けてから故障を直すことが多い。 そのため、 毎日設備に接しているオペレーターがいかに早く設備の異 常に気づき、報告できるかが重要となる。 そこで、豊橋事業所で注力したのが「設備に強いオペ レーター」の育成だ。オペレーターの設備への知識と点検 技能の向上を図るため、専門保全員がそれぞれの装置に関 しての知識をレクチャーしていった。宮森氏は、 「製造課 のメンバーは、図面を描いたりしながら、非常によく勉強 していました。製造側の知識も上がりますし、設備技術側 も『オペレーターはこういうところがわかっていなかった んだな』と知ることができ、お互いにしっかりがっちりと スクラムを組んで進めることができたと思います」 と話す。 また、 「オペレーターの知識が上がるにつれ、現場の要求 がより厳しくなってきたことで、設備技術側も『もっと高 度なことをやっていかなければいけない』と感じているよ うです」と語る。 そして現在は、 事前の 「チャンス保全」 に力を入れている。 これは同事業所独自の呼び方であるが、品種切替えのタイ ミングなど、“ 運転を止めているチャンス ” に保全すると いう取組みだ。オペレーターが事前に「異音が発生してい る」と設備の異常に気がついた時点で専門保全員に見ても らい、運転中の故障を減らす。宮森氏は、 「われわれは運 転中のブレイクダウンを減らすことを重視しています。現 場の感度が上がり、ひどい破壊に至る前に保全できるよう
製造と保全の二人三脚で 「故障ゼロ」に挑む
その後は、さらなる故障削減のため、次のステップへと 進んだ。専門保全員は日ごろ現場にいないため、オペレー
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