ビジネスインサイツ68
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品田 勝彦氏(企画管 理部 ものづくり力強 化 G グループマネー ジャー)
長がリーダーシップを持って分科会を率い、課長もそこに 入っていくという形でクロスさせているので、それがうま く運営できているポイントなのかなと思います」と語る。
「保全道場」で新人教育 次世代の担い手を育てる
TPM 開始から 10 年が経った今、活動は定着し、故障 件数は 14 分の 1 にまで激減した。豊橋事業所では、この になったことで、故障が大幅に減少しました」と語る。 体制を維持するために、毎年入ってくる新入社員の教育に 注力している。その背景について宮森氏は、 「昔の人はト ラブルの多いときも知っているので、 『今はかなり故障が 減った』という実感があります。しかし、新入社員は故障 が少ない状態で入って来るため、TPM のありがたみがよ くわかっていない。ですから、まずは『TPM はこういう 活動をやっている』ということを事務局がかなりしっかり と、数年間、定期的に研修しています」と説明する。 さらに、そのための実習設備である「保全道場」 (写真) もつくった。モデル設備では、設備技術者からボルトの締 め方、工具の使い方などを習いながら、実際に配管をばら す体験をする。また、 危険予知能力を高めるために、 「ロー ラーに巻き込まれたらどうなるか」を体験するコーナーも ある。 これをつくるために、宮森氏はさまざまな実習設備を見 学し、豊橋事業所に一番適した設備を模索したという。豊 橋では繊維を巻くローラーを多用するため、そのモデルも セットした。宮森氏は、足掛け数年かけて完成させた保全 道場への想いをこう語る。 「昔は、トラブルを通して腕も 知識も上げて、熟達していきました。しかし今は、トラブ ル自体が少ないため、 それを体験できないと自信が持てず、 怖さも知らないままになってしまいます。ですから、こう いった実習設備は絶対に必要だと思ったのです」 保全道場で講師を務める品田氏は、こうした教育はとて も重要であるとし、 「今までの活動を後戻りさせず、さら に良くしていくために、この保全道場を活用して事業所の 基盤をつくっていきたい」と熱く語った。 保全道場による教育について、JMAC の TPM コンサル タント木村吉文・中西浩明は「自主保全と専門保全がうま く連携しながら、現場に必要なスキルをしっかり理解した うえで保全道場を整えていったので、教育効果も高いと思 います。寿命を延ばす、修理間隔を延ばすために必要なス
リーダーの 「信念」と 「情熱」 が活動を牽引し、成功に導く
活動が成功している背景は、この保全体制の強化のほか にもう 1 つある。 全員参加の意識を醸成する体制づくりだ。 豊橋事業所では独自に、2 つの方法を取り入れている。 まず 1 つ目は、製造現場の活動を A タイプ・B タイプ に分けている。 装置を使うオペレーターの活動を A タイプ、 装置を使わない検査員の活動を B タイプとした。TPM で は製造部門が「なぜ自分たちだけ」という思いになること が少なくないが、検査部門も同じ熱量で作業改善に取り組 むことで、全員参加のスタートが切れた。 2 つ目は、 4 製造部長が専門分科会の会長を務めている。 事業所全体の活動は、部長率いる 4 分科会「自主保全・ 品質保全・個別改善・革新分科会」を中心に行う。これに より、 部長がトップ診断などで隣の工場を見る機会も増え、 活動への参画意識が非常に強くなったという。 この分科会の中で特徴的なのが、製造課長および生産技 術課長をメンバーとする「革新分科会」だ。現場の活動と 事業部のテーマをタイムリーにリンクすることを目的とし て、2015 年に立ち上げた。課長同士の横のつながりをつ くり、 レベルアップを図ることで、 課長が転勤で入れ替わっ てもレベルをキープできる仕組みづくりでもある。 宮森氏は、 「こうした活動は、リーダーが活動を信じ、 情熱を持ってやらなければうまく進みません。TPM は “ 仕 事とは別の余分なことをやっている ” と思われがちなた め、彼らにはいつも『TPM はあくまでも現場を良くする ための “ ツール ” だから、うまく利用してほしい』と話し ています。また、課長以下だけで活動すると、部長はどう しても傍観者になりがちです。その点、本活動では製造部
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