ビジネスインサイツ68
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な一歩となった。 菅野氏は一連の活動を振り返り、実業務との相乗効果を 得られたことも大きかったと語る。 「活動で視野が広がり、 いろいろ調べたことが既存事業のヒントになることも多 かったですね。また、JMAC と一緒に活動する中で『市場 性はどうか』 『どのようなビジネスモデルにするか』 といっ た視点も習得できたので、実業務のほうでも研究テーマの 事業アウトプットを描くうえで非常に役立っています」 そして今、2018 年はこれまでの膨大な記録を整理する ため、 未来 Create の全員活動を一時的に休止している。 「毎 回、かなりの比率で似たようなテーマが出てくること、今 後入ってくる新入社員は過去の活動を知らないことから、 専任部隊をつくって過去の記録をもう一度読み返し、 閲覧 ・ 活用しやすい形にまとめています」 (菅野氏) ティ 5.0(日本政府が提唱する科学技術政策の基本指針の ひとつ。IoT や AI、ロボットを駆使して社会課題の解決 を目指す)や ESG(持続的成長を目指すうえで重視すべ き 3 つの要素。環境:Environment、社会:Social、ガバ ナンス:Governance)などがあり、産業をクロスさせな ければ先に進めません。時代のスピードに合わせて IoT の 導入などにきっちりと取り組める組織にしていきたいと考 えています」 最後に、未来 Create 活動の新たな挑戦課題についてこ う語った。 「2011 年の活動当初に比べ、現在は事業環境 変化のスピードがさらに加速し、市場競争も激化してい ます。こうした中、わが社は中期経営計画で、2 つの主要 事業の事業領域を “ 店舗やオフィス ” からその周辺の “ 一 般消費者や物流、製造 ” まで拡大する方針を打ち出しまし た。われわれは技術の会社ですから、その実現のためには 外から技術を買ってくるのではなく、たとえば RFID 一括 セルフレジのような、われわれのコア技術で、われわれに しかできない技術・商品を創出していかなければなりませ ん。ですから、今後の未来 Create 活動では、これまでの 新規事業の創出に加え、新しい技術の創出にも挑戦してい きたいと考えています。 『技術起点で強い事業をつくりた い』という想いがありますので、そのためにはどのような 研究をしていったらいいのかも含め、未来 Create 活動の あり方を検討しています」 千三つの世界に挑み続けた東芝テックの研究者たち―― その確かな技術と未来 Create 活動で培った底力を糧に、 今、さらなる飛躍のときを迎えている。
洞察には必要です 情報が社会課題の 変化の兆しの
オンリーワンの技術創出で 強い事業をつくる
今後の活動に向けて着々と準備を進める中で、菅野氏は メンバーへの期待を次のように語る。 「先ほど小田原さん のお話にもありましたが、研究者は専門性が非常に高い人 達なので、身近なところにある事業に集中しがちです。今 は異業種の参入が加速していますから、視野を広げて異業 種とのクロスにも積極的に取り組んでいってほしいです ね。視野を広げることが未来 Create 活動の目的ですから、 そこに期待しています」 また、組織としても時代のスピードに対応した研究開発 をしていかなければならないと話す。 「まさに今、ソサエ
担 当 コ ンサルタントからの一言
未来の社会課題洞察が新事業企画のポイント
中長期の研究開発に取り組む研究開発部門における新規事業企画では、未 来の社会課題を洞察し、その社会課題を解決する技術を構想することが求 められます。ただし、何のインプットもなしに未来の社会課題を洞察する ことは難しく、未来の社会像を鮮明に描けるように、さまざまな観点から メガトレンドや社外技術といったいくつもの観点から、専門分野以外も含 変化の兆しの情報を集めることが不可欠です。東芝テック様においても、 めて変化の兆しの情報を集めて企画を進めました。未来 Create 活動を通じ て変化の兆しに関するアンテナ感度を高め、企画のための組織能力をさら に高めていくことも期待しています。
小田原 英輝
チーフ・コンサルタント
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