ビジネスインサイツ68
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設立:1919 年 10 月 連結売上高:7,865 億円(2018 年 3 月期) 連結従業員数:35,933 人(2018 年 3 月 31 日現在) 事業内容: 医療事業 (消化器内視鏡/外科内視鏡システム/処置具) 、 科学事業(生物顕微鏡/工業用顕微鏡/非破壊検査機 器) 、映像事業(デジタルカメラ/録音機)
2019 年に創立 100 周年を迎えるオリンパス。その事業継承の道のりは 建の旗手としてトップに抜擢されたのが笹宏行氏だ。笹氏は言う。 「私
Sasa Hiroyuki
決して平坦ではなかった。約 7 年前に不祥事が発覚、そのとき経営再 は経営の素人だった」 。しかし、 だからこそ断行できた改革がある。 「オ
リンパスの使命とは何か」を追求し続けたこの 7 年は、信頼回復、そ 世界トッププレーヤーへの挑戦を続けるオリンパスの、改革の足跡と 展望、その想いのすべてをお話しいただいた。
して再成長へ向けての道のりそのものであった。不祥事を乗り越え、
代表取締役社長執行役員
笹 宏行 氏
とでした。そして次の 4 つ、 すなわち、 「ガバナンスがしっ かりした経営体制」 「健全な事業」 「安定した財務体質」 「風 土」――が確立されて初めて信頼される企業になれると考 えたのです。 この 4 つを達成するために策定・発表したのが「中期 ビジョンの経営方針」 です。 ポイントは、 「1. 原点回帰」 「2. 利 益ある成長」 「3.One Olympus(ワンオリンパス) 」の 3 つです。 「1. 原点回帰」は、金融商品へ手を出したことへの大き な反省から来ています。われわれの本業は、 「技術を開発 して、製造して、販売して、サービスをすること」ですか ら、その「原点に帰ろう」という意味です。また、 「しっ かりと利益が出る事業をやっていかないと信頼を回復でき ない」ということで、 「2. 利益ある成長」 。そして、大き な経営危機に瀕していたので、 「とにかく全員であたろう」 ということで、 「3.One Olympus」です。 これらの経営方針に基づき、ガバナンスの再構築(社 外取締役を過半数入れる、コンプライアンスの強化など) 、 財務の健全化(1000 億円の増資で自己資本比率を 3 割台 に回復など) 、事業ポートフォリオの再構築を進めていき ました。とくに事業ポートフォリオについては、コア事業 をまず決めて、不要なものは整理しました。私がこの立場 になってから整理した会社の数は、約 90 社です。
「会社がなく なっ ても事業は残る」 One Olympus で経営再建
次は、One Olympus についてお話しします。当時、事 件が起こりさまざまな報道がされる中で、社員たちは不安 や不満、謝罪、後ろめたさといった気持ちにどんどんなっ ていきました。さらに、組織間でもお互いに「悪いのはそ ちらだろう」と責め合い、コーポレートと事業部、事業部 と事業部の間に溝ができました。 このときまず行ったのは、月 2 回の「社長メッセージ の発信」です。 「私たちはこのようにして良くなっていき ます」とマイルストーンを示し、それが達成されるたび に、 「ここまでよく来ました。次はあそこまで行きます」 と。 そうすると社員は「着実に前に進んでいる」と感じること ができますし、そういう実体感を持たせないと、なかなか モチベーションというのは沸きません。 また、双方向の「タウンミーティング」もかなりの数を 実施しました。社員 10 人ほどと私や経営陣でミーティン グを開きます。これまでにグローバルで 2000 人以上と 直接会って話をしました。いろいろな社員の状況を聴いた り、職場風土がどうなっているのかを把握したりすること ができて、非常に役立ちます。さらに、経営が何を目指し て舵取りをしているのかも伝わり、社員のモチベーション
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