ビジネスインサイツ68
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も上がります。これは今も続けています。 そして、社内行事も自粛しないで積極的に推進すること で、 「こうしたときだからこそ、これでがんばろう」とい うメッセージを発信し続けました。 実はそのころ、私も医師から応援のメールを多数いただ きました。 「オリンパスには患者さんに対する責任がある。 だから、しょげたり迷ったりせず、 『自分たちは患者さん のためにある』 、そう思ってやるべきことを全うしてくだ さい」と。そして、私から社員には、こういうメッセー ジを出しました。 「会社はなくなるかもしれない。けれど、 事業と製品とサービスはなくならない。なぜなら、それを 待っている人たちが世の中にはたくさんいる。みんなもそ のために働いているのであって、会社のためだけに働いて いるわけではない」――こうすることで目標を持たせる。 One Olympus になれる。私はそう考えたのです。 いました。そのため、 成長している医療事業に人が足りず、 他の事業では余る、ということが起きていました。また、 グローバル体制を強化するために、事業・部門の垣根を超 えてグローバルに統括する必要があったのです。 そこで、 分社していた会社を統合し、 事業を縦軸、 部門 (機 能)を横軸としたマトリックス制を構築しました。全社最 適の観点で組織間の壁をなくし、事業間や部門間で人の異 動をしやすくしたのです。こうして事業拡大に向けた経営 体制強化をした結果、2017 年には医療事業の売上高は全 体の 8 割、全事業の海外売上高比率も 8 割になりました。 それでは、われわれオリンパスの医療事業が提供する価 値とは何でしょうか。大きく分けると「早期診断」と「低 侵襲治療」があります。病気は早期に発見し、診断できれ ば、低侵襲(身体に負担の少ない)で治療ができます。そ うすると医療コストを大幅に下げることができるため、医 療費抑制が求められる中において、オリンパスはとても良 い事業ポートフォリオとポジショニングを持っていると言 えます。 実際には、胃や大腸などの消化器内視鏡で「早期診断」 ができ、 簡単な治療なら内視鏡で行えます。 外科手術になっ た場合でも、開腹せずにおなかに小さな穴を開ける手術で あれば傷口も小さく(低侵襲) 、入院期間の短縮や早期の 社会復帰が可能です。オリンパスはこうした治療の事業ド メインを持っています。
再成長を目指し、足元固め オリンパスなら ではの価値提供を
こうして経営再建に 3 年間注力したのち、2015 年には 「これからはもっと前を向いて歩こう」と、次の 5 年の中 期戦略を立てて、 「成長に向けた準備」を始めました。 まず行ったのが、 「人材流動性の確保」です。当社は事 業部制を敷いていますが、当時は事業単位で資源を持って 講演後の質疑応答・意見交換より
Q : 社長になって約 7 年、 長かったか短かったか。また、 自身の振る舞いのコアとなっている想いとは。 笹:過ぎてみるとあっという間の 7 年でしたが、する ことや考えることが非常に多く、1 日 1 日はとても長 いうことを、この 7 年間で学びました。 かった。 「本当に覚悟をすると意外にできるものだ」と
稀有なビジネスモデルで 世界ト ッ ププレーヤーを目指す
それでは、分野ごとの世界の市場規模とマーケットシェ アはどうなっているのでしょうか。現在の状況は次のとお りです(カッコ内は市場規模 : シェアは%で表示) 。
① 早期診断の消化器内視鏡(3,500 ~ 3,700 億円) : 70% 超 ② 早期診断の処置具(3,700 ~ 3,900 億円) :約 20%
Q:変わっていける組織・会社になるために一番重要 なことは何か。 笹 : 「社員にどういう気持ちになってもらえるのか」 「そ
れを経営としてどう把握して変化させていくのか」が
ポイントです。そのための仕組みや仕掛けは当然やっ ていかなければいけない。人というものは「変わりた くない」 「ぬるま湯にずっとつかっていたい」と思いが ちですが、それでは変われません。ですから、いわゆ キーポイントです。私自身、 「内視鏡の事業は今は大丈
③ 低侵襲治療の外科内視鏡(2,600 ~ 2,900 億円) : 20 ~ 25% ④低侵襲治療のエネルギーデバイス(1,600 ~ 1,800 億円) :18 ~ 20%
る「健全な危機感」をどうやって持たせるか。これが 夫だけど、今のままを今後も続けていったら、いつか こうなるよ、そうなってからじゃ遅いよ、だから今や るんだ」というメッセージをつねに発信しています。
どの市場も成長しており、競合する企業は①消化器内視 鏡のみほぼ日本企業で、その他 3 つは主に海外企業です。 オリンパスは全世界に 200 以上の拠点を持っていますが、 すでに 70%超のシェアを持つ消化器内視鏡は更新需要が
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