ビジネスインサイツ68
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業ではタブレット端末の普及で POS 端末が減少しつつあ り、プリンティング事業ではペーパレス化が進むなど、事 業の市場成長が鈍化しており、もはや安泰ではいられない という状況にある。 こうした背景をもとに始まったのが、今回の「未来 Create 活動」 だ。 この状況に危機感を抱いた研究者たちが、 新規事業の創出を目指して 2011 年に立ち上げた。活動 を主導してきた菅野浩樹氏 (商品 ・ 技術戦略企画部 リサー チ&デベロップメントセンター センター長附)は、当時 の想いをこう語る。 「2 つの主要事業の市場成長が鈍化す る中で、事業を成長させるために研究所ができることは何 か。それは技術を核にした新規事業や商品の創出ではな いかということで、既存事業にとらわれない新たな『第 3 の事業の軸』をつくりたいと考えたのです」
グ手法) 」では、インパクトが強いニュース情報を収集し、 そこから将来の社会変化を予測してアイデアを出していっ た。 これら最初の 2 つは社内メンバーのみで取り組んだが、 研究テーマの創出にはつながらなかったという。 新たなアプローチを模索していた菅野氏に転機が訪れた のは、2014 年 7 月のことだった。参加した「新規事業を 継続して創出できる研究所への変革セミナー」 (JMAC 主 催)の中で、従来取り組んでこなかった「社外有望技術起 点の新規事業企画アプローチ」が紹介されたのだ。JMAC チーフ ・ コンサルタントの小田原英輝が講師を務めていた。 このアプローチに興味を持った菅野氏は、JMAC に支援を 依頼することに決めた。 こうして 2014 年 8 月、東芝テックは JMAC をパート ナーとして、新たな挑戦へと踏み出した。
ポリシーは「起業家マインド」 つねに未来を考え続ける
未来 Create 活動には、実業務の研究開発と並行して全 員参画で取り組んでいる。ポリシーは「起業家マインド」 。 起業家は 24 時間アイデアを探し続けているとも言われる が、なぜ研究者が、そして全員が「起業家マインド」を持 つべきなのか。菅野氏は「やはり、 『研究者がいつも未来 を考えている』ことは非常に大切です。だからといって、 机の前に座ってウンウンと唸っていればアイデアが出てく るというものでもない。頭の片隅でつねにこの活動のこと を意識していれば、日常のふとしたことがアイデアにつな がる可能性もある。そういうこともあって、 『全員で起業 家マインドを持って取り組みましょう』と掲げています」 と説明する。 それでは、実際の活動はどのように進めたのか。活動当 初はとくに何かの手法は取り入れず、皆で集まっていろい ろとアイデアを出し合っていたが、 「次第に新しいアイデ アが出なくなり、方法を工夫しようといろいろな取組みを 始めた」 (菅野氏)という。その後は毎年アプローチを変 えながら、合計 5 つのアプローチ(右図)を活用して新 規事業企画に取り組んできた。 1 つ目の①「メガトレンド起点」のアプローチでは、自 社以外の成長事業領域(食料・エネルギー・医療・教育) も対象にしてそのトレンドを調査し、それをヒントに研 究テーマを探索した。2 つ目の②「未来洞察(スキャニン
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技術起点への転換で さらに発想豊かに
ここから JMAC 支援のもと、3 つ目のアプローチがス タートした。③「社外有望技術起点」のアプローチでは、 世の中にある有望技術の情報を集め、自社の新規事業に活 かせないかを考えていった。 その中で活用したのが、 「有望技術シート」と「仮想カ タログ」だ。 「有望技術シート」には、探索した 100 の技 術を 1 つずつ「技術の概要」 「技術を使える製品・サービ ス」 「顧客価値」などの視点でまとめた。100 もの技術を どうやって探索したのか。菅野氏は「研究所のメンバーは 自分の専門分野・興味のある分野から探すため、どうして も限定的・主観的になりがちです。社外の技術を網羅的・ 客観的に探索するために、JMAC に『どの情報源にアクセ スすればいいのか』 『どんな探し方をすればいいのか』の
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メガトレンド調査を 起点にした研究テーマの創出
社会課題 SDGs を 起点にした提案
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東芝テック 未来 Create 活動 5つのアプローチ
未来洞察 (スキャニング手法)
保有コア技術を コアとした ビジネス提案
③
社外有望技術 導入による ビジネス提案
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