ビジネスインサイツ70
- ページ: 15
- 本部の荒井健夫氏が説明する︒ ﹁このMIを使えば︑たとえば︑約
として、MI のコンセプトを地道に 各種社内発表会で技術者や経営層 ほか、全社横断の品質工学の推進 委員会において、開発手法の一つ
ち残れないという危機感をもとに成
とができます︒こうした研究開発の もともとコニカミノルタの祖業の 手法が確立すれば︑開発期間を従来 の 分の ないし 分の まで短縮 一つである銀塩の写真フィルムは︑
KEY WORD 2
開発プロセス の革新に データサイ エ ンスを活かす
15
万構造の計算を 日で完了するこ
社内への浸透
果の出る仕組みをつくり︑さらに開
発者の挑戦意欲を高めていく︒そこ
3
には﹁ 力を蓄えてから ﹂ではなく︑
﹁ 実力のちょっと先 ﹂を目指す姿勢
アピール。
20
が必要不可欠だと荒井氏は言う︒
5
1
職人的な勘と経験が活かせる分野で できます︒ できることは計算でやり︑ 技術者は結果の中から新たな原理を 見抜く力が求められます ﹂ そこで問題になったのが︑このM Iの活用をどう社内に浸透させるの かということだった︒荒井氏らはま ず社内の協力者とMI活用の連絡会 を発足させ︑外部情報や問題意識を 共有した︒だが︑実際のMI活用を 進める中で︑新しいやり方への抵抗 も大きかった︒ ﹁データ自体が少ないうえに分析精 度も不十分︒なかなか開発現場とマ ッチングできないのです︒当初現場 では﹃こんなのつくれない ﹄ ﹃ピン とこないな﹄ との声が頻発しました﹂ あり︑製品開発は半年から 年半と いうサイクルが可能 だった︒しかし︑銀 塩写真の技術開発が 終焉し︑勘と経験の 通じない新規分野で は製品の頭出しまで に 〜 年もかかる
1
﹁ 自分たちが実現したい姿を描いて︑
多角的にかつ根気よく相手の動機に
1
訴え続ける︒そうすれば︑だんだん
協力者が増えて裾野も広がってきま
す︒そして大事なのは︑メンバーは
その状況を打開するため︑荒井氏
必ず答えを出してくれるという思い
らは︑あらゆる場でMIのコンセプ
です︒コンセプトとメンバーへの信
トをアピールし続けると同時に自前
頼こそが組織を変える原動力となる
で実験 ・ 評価を行うチームを編成し︑
のです ﹂
3
ようになり︑いかに 研究開発のスピード を上げるかが大きな 課題となっていた︒ そこで同社が課題 解決のために取り組 んだのが︑サイエン スとデータ科学の融 合による開発プロセ
〝サイエンスの目 を養う
「第 23 回 R&D イノベーション
5
開発テーマを一体化︒さらに計算結 成や仕組みづくりに努めた︒
何度もメンバーと話すことで現場
果を開発現場に翻訳できる人材の育
は〝 窓 〟 を開いてくれる︒信頼を築
くことから実績は生まれるのだ︒
POINT OF VIEW
「異質な知の組み合わせ」 の事例として、社内で生まれた新たな「知」
ません。 一方で、 こうした活動で成果を出すことは容易ではありません。
の浸透について講演していただきました。R&D の生産性を高めるため
﹁こうした取り組みの結果︑少しず スの革新だった︒そ
マテリアルズ・インフォマティク ス (MI) とは、実験・シミュレー ションから得たデータを機械学習 などの AI で解析し、帰納法的に材
つ成果が出始めました︒とくに入社
フォーラム」 の講演資料より
半年の新人が 万個の組み合わせの
のとき欠かせないのが材料開発にお
KEY WORD 1
中から 個のポイントとなる組み合
けるデータサイエンス︑すなわちマ テ リ ア ル ズ・ イ ン フ ォ マ テ ィ ク ス ︵ MI ︶だ︒このMIとは︑実験・ シミュレーションから得たデータを 機械学習・ディープラーニングなど AIによる解析によって帰納法的に 材料設計する手法だ︒同社開発統括
わせを抽出し︑実際にそのとおりの
MI
実験結果になることを実証したのは
料設計する手法。
驚きでした︒さらに︑過去の製品に
使用した材料が別の用途に有効だと
には新たな「知」 と、その取り組みをドライブさせる人の存在も欠かせ
問題に直面しながらも新たな「知」 の浸透を実現した取り組みが本事例 イノベーションのための
「 知」 新たな の社内浸透を実現
近藤晋 (R&D コンサルティング事業本部長 シニア・コンサルタント)
〝 実 力のちょっと 先 〟 で 挑 戦 意 欲 を 高めていく
10
50
事例はとくに経営層に受けました ﹂
MIを使わなければ開発競争に勝
のポイントです。
いう事例も相次ぎました︒こうした
15
Business Insights Vol.70
- ▲TOP