ビジネスインサイツ JMAC40周年記念特別号
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- 動的平衡とは
﹁ 動的平衡 ﹂という言葉は︑私の
は︑生命が行っているサステナブ 他を利することによって︑巡り イメージです︒
ルとはちょっと乖離があるという
巡って自分も利されるには︑その
時間軸は大変長くもあります︒し
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「動的平衡」 こそ 企業のイ ノベーションモデル 生物学に見るこれからの経営
実践するうえで、 多くの示唆を与えてくれる。 生物学者である福岡伸一氏に、
生命論のキーワードです︒ ﹁ 生命 生 命 は︑ とは何か ﹂ と問われたら︑ 私は ﹁そ れ は 動 的 平 衡 だ ﹂と 答 え た い と 思っています︒動的平衡は ﹁ 絶え ず動きながらバランスを取る ﹂ と い う こ と で す が︑で は 絶 え ず 動 ﹁ 自分自身の生命システムを積極 的に壊しながらつくり変えてい る﹂ ということです︒そのことに よ り︑環 境 と の 間 で エ ネ ル ギ ー や物質や情報の交換をしながら︑ なんとかバランスを取っている︒ これが生命体のもっとも重要な 部分です︒ この観点から︑人間の社会や企 業︑あるいは組織みたいなものも かと考えています︒
億年間の長きにわ
かし生命体は絶えず他を利しなが
生物学の中の 「動的平衡」 という概念は、 企業経営や組織マネジメントを
たってずっとサステナブルであり
ら自分も利される︒ ﹁ 利己的なあ
これからの企業の理想的なあり方についてお話を伺った。
続けたゆえに︑現在地球にこれだ
り方 ﹂と﹁ 利他的なあり方 ﹂とい
け多様な生命体があるわけです︒ ければいけないと思います︒
うところが︑生命と企業でいちば
そこにもう少し虚心坦懐に学ばな
ん大きな差ではないでしょうか︒
11.17 TOP INTERVIEW SESSION
くとはどういうことかというと︑ 私たち人間がサステナブルであ
りたいと思っているサステナブル
企業における ﹁ 利他 ﹂ とは どのような活動を指すのか
青山学院大学教授
と︑生命システムがサステナブル 実は私︑2025 年に行われ
であるのと︑どこが根本的に違う
る 大 阪・ 関 西 万 博 の プ ロ デ ュ ー
かと言うと︑会社が目指している
サ ー を 拝 命 し ま し た︒ そ の 中 心
サステナブルは︑今のところどこ
テーマが﹁いのち ﹂ということな
までいっても﹁ 利己的なサステナ
んです︒その中で︑ やはりこの ﹁動
ブル﹂なんですね︒しかし︑生命
的平衡 ﹂と﹁ 利他 ﹂をキーワード
が行っているサステナブルは︑実 です︒
に し て い ま す︒ 生 命 の 利 他 と は
は﹁ 利他的なサステナブル﹂なの
いったい何かと言うと︑自己犠牲
で 何 か を 他 に な し た り︑ 寄 付 や
と 捉え直すことができるのではない 企業が﹁ 世の中に貢献する ﹂
チャリティをしたりすることが利
して行っている活動は︑実際は利
他 で は あ り ま せ ん︒ 生 命 体 が
サステナブル経営と 生命のサステナビリティは 似て非なるものなのか
生命科学の見地から見ると︑現 在のサステナブル経営というの
己的である︒それに対して生命は
100 しかないときに︑そこか
利他的に動く︒他の人を利するわ
ら をあげるというのは利他では
けですが︑結果的に自分のほうに
なく︑それは自己犠牲︒自分も危
戻ってくる︒そういう︑ある種哲 ます︒
機に陥ってしまうわけです︒
学めいた真逆の流れがあると思い そうではなく︑生命が行ってい
る利他は︑まず自分自身をエンパ
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JMAC 40th Anniversary
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