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第8回 顧客洞察の方法論(4)顧客洞察16の手法

 「顧客洞察の方法論」としてCXすなわち「カスタマーエクスペリエンス」の意義と観察について数回紹介してきた。今回は顧客洞察の方法論のまとめとして、洞察の具体的な手法を列挙し活用に向けたポイントを紹介する。

顧客洞察のための16の手法

 下図に顧客洞察のためにJMACが有効と考える16の手法を示す。
 すべてを実践している必要はないが、仮にもマーケティングを実践していると言うからには、いずれかの手法を活用しているはずである。

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 貴社では、これらの中からいかに自社に合った必要な手法を選び、自社流の洞察方法として活用できているだろうか。私は、コンサルティングやセミナーなどでさまざまな企業のマーケティング部門やCS推進部門の方々にお会いすることが多い。みなさん口を揃えて「新しい商品、サービスの開発は難しい」「ヒット商品がなかなか生まれない」「他社に先を越されることも多い」とおっしゃる。その一方で、私が「上記のようなさまざまな手法を実践していますか?」と問うと、「いや、あまり・・・」「過去にはやったことも、いやないかも」「他部門でもやっていないと思う」といった回答をする企業・担当者がきわめて多い。また、「これらの手法を知っていますか」と問うと「知っています」が大半であり、少なくとも「聞いたことはあります」という回答である。要するに「顧客ニーズの探索に困っている」なかで、図に示したような手法は「知っている」が「実践していない」わけである。

馴染みのない手法にもトライしよう

 顧客理解、顧客洞察は自然にできるわけではない。誰かが何かを行って情報を得て分析し表現し直す作業が必要である。これは全社員の役割とも言えるが、やはり主役はマーケティング部門やCS推進部門のはずである。その主役であるはずの部門が、いろいろある手法を活用していないということは、社内で誰も顧客洞察に向き合っていないという懸念があり大問題である。「いや、うちではマーケティング部門ではなく技術部門が顧客洞察を行っている」というご意見もあろう。しかし私が20年以上の経験から自信を持って言えるのは「技術部門は基本的にシーズ発想であり、顧客起点といっても一部の技術者の"頭の中"での思考に過ぎない」ということである。
 やはり顧客洞察はマーケティング機能として、マーケティングを司る部門が主体的に専門的に実施していく必要がある。その中で馴染みのある手法や、自社で毎年やっている調査などを繰り返すことも否定しないが、時に新しい手法にトライしてみてはどうか。顧客洞察に取り組む際、もっとも注意すべきなのは「顧客のことをわかったつもりにならない」ということである。「いつもの手法」は「いつもの結果」に至ることが多く、「新しい発見」は「新しい手法」によりもたらされることが多い。
 下図に示す「馴染みが少ない」手法もぜひ取り入れてみてはどうか。

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手法に埋没しない

 以上のように顧客洞察をするためには、当たり前だが何らかの手法を活用しなければならない。自社が慣れ親しんだ手法で十分であり、他社に差を付ける自社らしい価値が発見できているならば問題はない。しかし顧客をもっと理解したい、顧客価値を先取りして見出したいならば、慣れ親しんだ手法以外にもぜひトライいただきたい。
 ただし、忘れていただきたくないのは「手法はしょせん手法である」ということである。今回、さまざまな手法の活用を推奨したが、やはり手法は道具であり、いかに上手に使いこなすかが成果を左右する。これらの手法にトライしつつも、その中で自社にとって本当に役立つ手法ややり方を見つけていくためには、「顧客洞察ならではの視点」が大切である。

 次回、この「視点」について解説し、「顧客洞察の重要性」のまとめとしたい。

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