第9回 顧客洞察の方法論(5)顧客洞察7つの視点
「顧客洞察の方法論」のまとめとして、顧客洞察を的確に行うための視点を紹介する。本来この視点から紹介すべきであったかもしれないが、「顧客洞察とは何をどうやるのか」を理解していただかないと視点についてピンと来ないと思われるため、まとめとして解説したい。
改めて「なぜ顧客洞察か」
顧客理解ではなく、顧客洞察としている意義・意図は何か。顧客理解も洞察も目的は、自社の顧客について深く理解し、自社らしい提供価値をつくるためである。そもそもマーケティングは顧客から始まるからと言ってもよい。あえて「理解」ではなく「洞察」としている理由は以下の2つである。
1つ目は、「今のレベルの理解度で良いのか」という点である。さまざまな企業のマーケティング担当者やCS推進担当者にお会いするのだが、自信を持って「顧客理解ができています」と言っていただけるケースはほとんどない。各社「顧客理解が大事だ」と言う一方で「顧客理解が不足している」と自覚しつつ、「顧客理解を深めるためにさまざまな手法の活用にはトライしていない」という実態である。これで良いのだろうか。
したがって、あえて「理解」ではなく「洞察」と言うことで、「今のままでは顧客のことをわかっているとは言えない」という意図を込めているのである。
2つ目は、「顧客」の理解だけでは足りなくなってきたという認識があるからである。とくにこれまでの顧客理解は、顧客と企業の接点で行うものという暗黙の認識があった。顧客は企業との接点で企業の製品やサービスを評価し、再購入や他者推奨につながると考えられてきたため、企業も顧客接点でいかに顧客理解を深めるかに集中して取り組んできた。この構図が、昨今のインターネットの普及、SNSの台頭などにより大きく変容を求められるようになった。つまり顧客と企業の接点で意思決定が起こらず、もっと奥底、たとえば友人・知人の体験への共感やより広汎な生活体験からもたらされるようになったのである。この傾向を重視したコンセプトの一例がCX(カスタマーエクスペリエンス)であり、本コラムでもすでに紹介した。
このように顧客について「理解」するだけでは足りず、顧客自身やその周辺で何が起こっているのか、なぜそのように行動しているのか、何に影響を受け、どうありたいと考えているのかという意思決定の根源を探る必要が出てきたわけである。こういった背景から「顧客洞察」と表現し目指していこうと主張しているわけである。
(これらの背景や考え方については本コラム「第4回 顧客洞察を軸とした"シン・マーケティング"へ」をお読みください)
「顧客洞察」7つの視点
このように「理解」とは明らかに違う「洞察」を目指すためにはどのような姿勢が求められるだろうか。
下図を見ていただきたい。視点までブレークダウンする前に、まず3つの姿勢を基本原則として掲げた。
これら3点は当たり前のようにも見えるが、実践するとなるとなかなか手強い。これらの姿勢を実践に移すためにJMACでは「7つの視点」を掲げて、洞察の思考・行動のあり方を検討していくアプローチをとっている。
前述の3つの姿勢と7つの視点との関係を下図に示した。
これら7つの視点はJMACがコンサルティング実践を通じて抽出したものであり、多くの企業のマーケティングに役立つものと自負している。ただし、貴社が7つすべてを活用すべきであるとは言えない。顧客との関係性や事業特性などにより自社に役立つものを見つけ、活用を通じて、使いこなしていくべきものである。
また、7つの視点をあげただけでは「なるほど!」という納得や気づき、実践に至りにくいことも重々承知している。コラムという情報発信の限界でもあり、具体的な事例紹介や解説はご容赦いただきたい。ご関心をお持ちいただけたらメールなどいただければ幸いである。とはいえ多少の情報提供はしたいので、前回(第8回)に紹介した顧客洞察16手法のうち7視点と関わりが深いものについて手法と視点の組み合わせの典型例を下図に示しておく。
さて、今回で顧客洞察の方法論についての紹介は終了し、次回以降3回にわたり「これからのマーケティングテーマ」としてこれからぜひ考え、取り組んでいただきたい領域を取り上げ、私の「顧客中心マーケティングへの原点回帰」のまとめとしたい。
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