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第4回 事業化のネタづくり 〜技術と顧客価値を考える〜

1.顧客価値(CV:CUSTOMER VALUE)法

 下図はCV(Customer Value)メッソドの考え方を示したものです。技術シーズとは、会社が持っている技術のうち第3回で示したVERIO評価法でとくに強いものを対象にするのが一般的です。このねらいは技術シーズの強みを顧客価値につなげ、さらに商品化構想を策定することにあります。

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 技術特性に関しては、技術者は物理的・化学的特性で比較的容易に抽出できる場合が多いです。問題は技術シーズを顧客価値と商品化アイデアまでつなげる方法です。

 次の図は実際の事業化の事例です。この場合は、従来はできなかった特殊金属同士の結合を、原子レベルまで完全結合する生産技術が対象です。技術の特性から"超軽量化"と"耐プラズマ性"という物理特性は既知の事実です。これをキーワード的に残して置き、この2つのキーワードから顧客価値につなげるためにモノのイメージとか具体的な表現で検討するのが、顧客価値法です。

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 今回は、「耐プラズマ性が腐食しにくいもの」から特殊環境下での製造方法、装置の連想につながっています。ここではコンサルタントの経験から、半導体製造という業界に連想がつながっています。ここから半導体製造装置部品で逆に軽量化構造ができるというように、商品化アイデアからまた技術の顧客価値に戻っています。

 実際の現場では、技術特性、顧客価値、商品化アイデアは行きつ戻りつしながら連想発想し、商品化を熟成していくというのが現実です。このシーンは技術特性キーワード、顧客価値キーワード、商品化キーワードとキーワード的に展開を進めています。これに、業界経験豊富なコンサルタントの知識、知恵を結集して事業化へと展開していきます。

2.顧客価値からの事業ドメインの横展開発想

 下図は、「技術シーズ特性⇔顧客価値⇔商品化アイデア」をさらに他の事業ドメインに広げ、商品化アイデアにつなげる横展開発想マップです。

col_mot_04_03.png 既存事業ドメインは、今ここで売り上げ・収益を上げている事業分野です。将来の事業ドメインは、中・長期計画の中で、当該会社がこの分野に戦略的に出たい分野です。その他、参入容易分野、成長分野などの進出分野をあらかじめ置いておき、ここと顧客価値とのポイントで商品化アイデアを発想する場合もよくあります。

 一般的に言われている例では、参入容易分野はスポーツ、衣料分野などがあげられます。また、成長分野は医薬バイオ、環境、半導体、液晶、ナノテク分野などがあげられます。これらの分野と既存商品・部品・要素品のマトリックスをあげ、これらの商品群、部品群、要素品群の置き換えを考えていきます。このときにもっとも重要なのは、顧客価値であることは、間違いないことです。

 簡単な例を下図に示します。「水滴ができず、くもらない」という顧客価値キーワードと既存ドメインの「鏡・ミラー」というキーワードから、さまざまな分野の商品群を発想しています。このときに他の事業ドメインで、顧客価値に戻って「水滴ができず、くもらない」が本当に活かされる分野で商品価値をつくり込む必要があります。

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