第11回 事業化計画の検討 〜マスタープランの作成〜
1.プランニングの視点
下図は事業計画を総合的にプランニングしたマスタープランです。
変化とスピードの激しい時代でどれだけ先を見て計画を立てるかは、大きな経営課題です。事業化の全体期間は、中期計画レベルで3〜5年のレンジで作成するのが一般的です。
マクロトレンドに関しは、グローバルでの法規制の変化、人口動態、GDPの変化などの大局を押さえる必要があります。
顧客価値とソリューションに関しては、B To B To Cの価値連鎖の中で、技術の顧客価値を明確に打ち出す必要があります。顧客価値のカギとなるのが「先行技術開発」です。このテーマ設定と課題ばらしを経営も納得したうえでプランニングすることが大切だといつも感じています。
今日では、自社の技術の引き出しと戦略的な技術M&Aも必要です。マーケテイングと技術の両輪で経営と議論できる技術者は、ひとりの事業家のゴールの姿だと思います。自社の技術ロードマップにさらにグローバルな知見を入れて設定する力が求められているのです。
最近の話題で、米国でボストンを中心とするコミュニティとサンフランシスコ・サンノゼのコミュニティを比較したところ、後者の群が圧倒的に経営成果を上げているとのことです。米国の学者はこれは現場での縦と横のコミュニケーションと議論の質と量の差と言っていますが、技術議論とその経営的な場づくりの大切さは改めて言うまでもありません。
経営リソースに関しては、開発型企業では、研究と開発のリソースをどう配分するかが課題で、そのときどきの経営ニーズで配分のバランスは変わります。
2.21世紀の先行技術開発
下表は2003年にMITのマグナンティ教授グループが発表した、20世紀の偉大なエンジニアリング業績です。電力からクルマ、飛行機、上水道、電子デバイス、農業機械、コンピュータ、電話、クーラー・冷蔵庫、高速道路、ロケット、インターネット、画像・写真、家電、医療技術、石油産業、レーザー・光学、原子力、先端材料の20のドメインがあげられています。
21世紀に入り、われわれはこれをさらに進化させて事業価値を高めるため、先行技術開発のテーマについて先端研究所を中心に議論しています。たとえば、電力に関してはより省エネの議論が、事業化テーマとしてはマイクロ電力、エネルギーハーベストなどの小電力を集積する仕組みをつくり、タイムシェアリング的に使う方法の議論が盛んになってきています。そのためのセンサー開発とどのような先端電子材料を使ったらよいかの話題も出ています。
クルマについては、自動運転のロードマップがカーメーカーから示されているので、人検知と自動化と人工知能の議論が盛んに行われています。人工知能に関しては、30年前からカーネギーメロン大学を中心に研究されていますが、ようやく表舞台に立つときが来ました。
グローバルなトレンドの中で過去から未来へつなぐ先行技術開発のテーマ設定を常に考え続け、情報を集めて議論する仕組みが必要だといつも感じています。
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