【最終回】 第12回 事業化計画の評価と経営成果
1.事業化計画の評価
事業化計画は下図に示す3つの視点で評価していきます。
■自社適合性
自社適合性は、経営リソースをフルに使い、事業の勝ち筋がつくれるかが最大のポイントです。自社の特性として、個別受注型企業と多品種大量、多品種少量型、B to B型、B to C型、オーナー型、サラリーマン型のタイプがあり、それぞれに応じた強みを活かして、事業計画を評価する必要があります。個別受注の企業がいきなり何千台、何万台の量産事業に打って出たいという場合もありますが、得策は少ないと思います。また、B to B型の企業がB to C型の企業に出る場合、品質保証体制も変わりそれらのリスクをどう考えるかの議論が大切です。
日本企業の場合、積み上げてきたコア技術が源泉になることはいうまでもありませんが、大企業、中堅企業では、技術M&Aも選択の重要な要素になります。
■市場の魅力度
市場の魅力度に関しては、市場規模が500億前後あって大企業が進出するにはメリットが少ない事業領域などは中堅企業にとっては「おもしろい市場」と考えます。
■推進力
推進力に関しては、CEO/トップの姿勢は当然ですが、担当の熱意と役員レベルのバックアップが大切です。サラリーマン型企業では、CEO、研究所長、役員が変わる場合も多いのですが、マネジメントの仕掛けとして、事業化の基盤づくりと人材育成をしたたかに進める必要もあると思います。
2.経営成果
下図に素材系A社での成果イメージを示します。
この会社は毎年事業化チームを立ちあげ、初期には3つの事業で売りにつながった事例です。初期のプロジェクトは、筋のいいテーマ、強いリーダー、CEOの強い思い、経営陣のバックアップがありました。成長市場の自動車分野では数年後に数十億、半導体分野では20億強、そしてエネルギー分野では時間がかかり、売りが立つまでに8〜9年かかっています。3テーマともリーダーの顔が忘れないほど"強烈な個性と思い"、あきらめない気持ちがありました。典型的なチーム編成として、事業を冷静に俯瞰できる方と技術研究の達人がペアになっていると、そのチームは最強と思います。
時代が経過するにつれて事業化の確度が低くなり、ネタ探しに苦労することになります。事業化の確度に関しては、昔は3/1000との通説もありましたが、現在は自社、市場、事業モデルを俯瞰しながら進めることで、経験的ですが6つの筋のいいテーマがあればそのうちの1つは数年後には売りにつながるようにしています。
事業化でもうひとつ重要なことは、いつやめるか、撤退するかの判断です。多くの企業はずるずると引き延ばし、結果として人材リソースのモチベーションを下げることになっています。担当の本人は、やればやるほど思いが強くなり、冷徹な判断ができなくなります。数年経つと経営陣、上司も変わり、誰も責任を取らないケースも多く見受けられます。撤退の条件は、時間で区切るのもひとつの手段と考えます。3年、5年を目処に撤退か継続・進出かを意思決定するのは上司・役員の役割であり、その仕組みを意識的に経営に入れる必要があります。
最後にこれで12回の連載は終了します。 事業化に困ったときには原理・原則に立ち返ることが肝要といつも考えています。顧客価値、差別化、売るしかけをつねに考えています。JMAC RD&Eでは年間200プロジェクト以上のコンサルテイング実践を実学に活かして支援していく所存です。今後ともよろしくお願いいたします。
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