第2回 信頼できる保全システムの構築に向けて
前回は「信頼できる保全システムの構築」と「人づくり」の必要性について触れた。今回から数回にわたって、「信頼できる保全システムの構築」について解説していく。
システムが信頼できなないのはなぜか?
あるボールベアリングの保全システムを考えてみよう。その構築に向けて、まずは注油周期や劣化診断(異音や振動診断)周期、そして寿命に達する前に取り替える保全標準を入力することから始まる。しかし、注油や診断の周期を決めたものの(システムに登録はしたものの)、実際の作業の原則が守られていなかったらどうだろうか。予測寿命をはるかに下回る運転時間で性能が発揮できなくなってしまうことは明らかである。
つい先日、ある繊維会社で調査を行った。年間1000件を超える故障に手を焼いており、故障を減らして生産性を高めたいという。
同社でも保全システムを導入・活用しており、定められた周期に基づいて、点検・交換を行っている。しかし、一方で年間1000件を超える故障だ。「システムが信頼できない」と頭を痛めるのも当然であろう。
過去にさかのぼって原因を特定することは困難だったが、お客さまと長い時間をかけて議論・分析して故障を層別したところ、約38%の故障が潤滑油不足によるものと推定できた。言い換えれば、注油作業と潤滑油の分析結果をしっかり情報管理していけば防げる故障である。
つまり、「信頼できるシステム」を構築するには「保全システムに、現場の潤滑管理の原則が満たされているか否かの情報を、どう組み込んで管理するか」というシステムデザインも必要となる。
同様のケースを、4年ほど前にある建材メーカで経験した。年間860件の故障を、(潤滑油管理だけではなかったが)保全情報管理システムの改善で、2年かけて40件まで減らすことができた。原則情報を吸い上げて寿命保証の良し悪しに反映するシステム開発に注力してきたが、その開発プロセスにこだわれば「技術の深さ」も醸し出される。
さらば机上のシステム構築 まずは現場・現物・現実を!
保全システムを導入することは、設備管理上重要である。しかし、資産管理に基づいて「ユニット・コンポーネントを登録し、点検・交換周期を定めました」「予備品管理もできるようにしました」で終わりではなかろう。
「信頼できるシステム」は設備トラブルを防止できなければならない。設計寿命まで設備を駆使するための現場情報(今回の例では潤滑管理)を組み込み、日常保全(すなわち寿命保証)が十分であるか否かも、保全システムで管理することが大切である。
システムを机の上だけで考えてはダメだ。現場に行けば、保全システムの弱点にもっと気づくはずだ。
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