第5回 保全体制を整えるために、保全の行動面から故障原因を考える
本コラム第2回の「信頼できる保全システムの構築に向けて」について、何がポイントなのか、もう少し詳しく知りたいというコンタクトがあった。そこで今回は、そのポイントについて補足していく。
結果系の層別から原因系の層別へ
保全システムを導入したとしよう。システムには、設備のコンポーネントを登録し、それぞれの点検・交換周期を定め、そしてその運用に移る。
もし故障が発生すれば、どのコンポーネントが故障したか記録され、下図のような故障頻度統計が出力される。
故障を減らそうというアプローチだけを考えるならば、もっとも頻度の多いロールから故障削減に取り組むことになるが、「信頼できる保全システムの構築」を目指すならば、図のような結果系のデータ層別だけでは無理だ。保全の技術面と行動面の原因系データの層別が必要となる。今回は行動面に焦点を当てる。
行動面の原因系から弱点を明らかにする
故障が起きる行動面の原因系として、
- 基本条件(清掃・注油・増締)不整備
- 設備の使用条件・運転条件不遵守
- (寿命を迎えた部品の)取替放置
- 設計ミス
- (点検・取替えに関わる)保全技能不足
の5つをTPMでは「故障原因」として定義している。
故障データを原因系で層別すると、下図のような故障統計が出力される。
図を見ると、設備の基本条件が整っていないことによる故障が圧倒的に多いことがわかる。保全システムを確立する場合、清掃状態・注油状態・芯出しの原則を細かく規程し、点検・取替えにより原則を維持するための保全作業標準の充実とスタッフの教育が必要となる。
故障が多い設備やコンポーネントの層別だけでなく、保全の行動面の原因系に対して層別を行い、弱点を明らかにし、信頼できる保全システム構築に向けた1歩とすることを提案する。
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