お問い合わせ

第3回 同業種による共同物流(その2)

 前回の3パターンに続き、最後に共同配送・共同倉庫のパターンを紹介し、導入への障害とその対策について整理しておこう。

パターン4:共同配送・共同倉庫 実施すればコストメリットが大きい

 企業の物流コストの中で、もっともその比率が高いのがエリア配送(顧客納品)である。総物量が減少する状況下において、この領域で共同化を推進することによるコスト的なメリットは大きい。生産財、消費財を問わず、共同化により物量のまとまらない販売エリアに対し、配送の面密度を上げることで積載率・回転率の向上を図ることができる。
 とくに同業種では、商流特性・荷扱い特性が類似しているため、配送に関わる一連の業務(事務作業含む)を標準化しやすい。また、製品形状も類似していることから、出荷ユニット(通い箱、カゴ車など)を効率化しやすいといったメリットがある。すなわち単純に配送費が下がるだけはなく、管理費・資材費などを下げることも可能になる。

導入するときの障害とは

 導入・継続の第1の障害となるのが、荷主営業部門からの反対である。「納品情報が競合に筒抜けになる」「とにかく競合と一緒に運ぶのはいやだ」といった心理的な抵抗感である。

 第2の障害となるのが、コスト配賦方法の合意である。一般的に固定負担費と変動負担費に分けて共配各社に配賦することになるが、納品先の構成や物量変動に伴い、定期的に配賦条件を見直していく必要がある。諸条件が安定している場合にはそれほど問題にはならないが、そのような業界はまれであろう。これは各社にとってかなりの手間となっている。
 さらに上記変動に伴い、輸送効率やコストダウンの改善につなげる取組みが不可欠であるが、これを誰が管理するのかも共同配送を継続するうえでの大きな課題となっている。

 第3の障害は、委託する物流事業者の選定である。共配各社が委託している業者の中から選定する場合が多いが、委託しているエリアが必ずしも共配を実施するエリアと重ならない。よって各社は自社の業者を強く推すことになる。また、物流子会社がアセット(倉庫、車両など)を保有している場合、自社の稼働率・売上確保という問題も発生するので、限定的な範囲でしか共同化できないケースも多い。

障害を取り除くには

■物量の多いエリアほど効果がある
 第1の障害は、物流事業者の情報システムを含めた管理レベルが向上してきていること、および昨今のコストダウンの圧力により、徐々に払拭されつつある。
 共同配送の実施対象となるのは、比較的物量がまとまらず、売上高に対する配送コスト比率が高いエリアというのが実態である。確かに物量が少ないとコスト改善施策も限られる。そこで共配各社は「物流では競争しない」という名目を立てることにより共配が開始しやすくなる。
 しかし、共同配送で最大の効果を発揮するのは、実は物量の多いエリアであることには、あまり目を向けようとしていない。削減単価×物量で比較すると、当然ながら物量の多いエリアでの効果額の方が大きくなる場合が多い。ただし、すでにこのようなエリアでは各社とも配送網を完成させているため、他社にも大きなコストメリットを与えるような共同配送には踏み込めないのである。

■システム標準化への投資がカギ
 第2の障害に対しては、透明性の高い配賦条件と環境変化に対応した効率化策を立案する能力を共配各社が持てるかどうかにかかっている。そのためには、共配各社の情報システムのインフラを標準化する必要があり、それなりの投資負担も発生する。2、3社程度の共同化であれば、トップ同士の合意も取りやすいが、スケールメリットを最大限に発揮するまでには至らない。荷主が主体となる共同配送があまり長続きしない原因は、この辺りにある。

■各社の特性をどこまでなくせるか
 比較的大規模な荷主を中心とした共同配送は、以上のような課題を抱えている。中小規模の荷主企業の場合、自社で物流倉庫を保持することができず、協同組合形態での共同物流倉庫を活用するケースが多い。この場合は必ずしも同業種である必要はないが、前記の共同配送と同じく、できるだけ同業種で集積を高めた方が効果は大きい。この場合の成功のポイントは、各社の特性に応じた「仕様」をできるだけ排除することにある。仕様とは、倉庫仕様、作業仕様、情報システム仕様などを指す。
 小規模の集まりであるがゆえに、各社のオペレーションが異なると、倉庫作業者の習熟に時間がかかり、作業者の稼働率が下がる傾向にある。これを防ぐためには徹底した仕様の標準化が必要となる。
 卸売業の協同組合なども、この範疇に入るだろう。共同物流を目的とした卸売業の協同組合は、組合員企業の物流効率化を目的とした組織であるため、1社では取り組めない効率化でも、スケールメリットの獲得に向けて共同で取り組くむことができる。



 卸売業という業態で見た場合の課題解決のカギは、参画する卸売各社が自社の物流アセットをどこまで減らせるか、さらなる商物分離を徹底できるか、にある。そもそも卸売業は在庫を持つ拠点数が多く、営業マンが商物一体で活動しており、それを放置したまま共同化を進めても、見かけ上の外部支払い物流コストは減っても、かえって実態としての内部物流コストが上昇している場合が多い。

オピニオンから探す

研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜

  • 第30回 心理的安全性は待つものではなく、自ら獲得するもの
  • キャリア面談で人は変わる!イノベーション人材とキャリアプランの密接な関係
  • TCFDに基づく情報開示推進のポイント
  • オンラインサービスは新たなCXをもたらしたのか? オンラインサービス体験から見えた、メリットデメリット
  • 一人一人の「能率」を最大化させる、振り返りのマネジメント「YWT」のすすめ
  • 第5回(最終回) 全社員をデジタル人材に!
  • 第5回(最終回) 全社員をデジタル人材に!
  • 【業務マニュアル作成の手引き・後編】マニュアルが活用されるための環境づくり
  • 品質保証の「本質」を考える ~顧客がもつ、企業に対しての「当たり前」~

オピニオン一覧

コラムトップ