第7回 3PL新潮流 〜3PLの実態と課題〜 (その1)
3PL(サード・パーティ・ロジスティクス:third-party logistics)という言葉が日本の物流市場で使われ始めたのは、確か1995年頃だったと記憶している。90年代に入り、「物流」から「ロジスティクス」へと企業の管理範囲が拡大し、さらに2000年代に入ると「SCM」の時代となっていく流れの中で、積極的に物流機能のアウトソーシングを進めたい荷主と、単なる下請け業者からの脱皮を模索していた物流事業者の相互の思惑が一致して、3PLは日本において進展してきた。
3PLの類型
現在の3PLをそのパターンによって分類すると、おおむね以下の3つに類型化できる。
■メーカー子会社型
親会社・グループ企業の強みを生かした業務受託を行なうケースが多い。
■物流専業者型
専業者として自社が持っているインフラ(車輌・倉庫・人員)を前面に押し出した業務受託が主体である。
■商事・商社型
商流と物流をセットにして、商社が荷主に提案をするのがポイントである。
それぞれに特徴があり、強み・弱みを内包してるが、現状における3PLの実態としては、大きな課題を抱えていると言わざるを得ない。
3PLの典型的な失敗パターン
多くの3PL事例において、3PLが上手く機能していない場合が散見されている。それは、3PL導入のプロセスにおいて、荷主サイド、3PL事業者サイドで以下のような思惑のズレが発生しているためである。
このようなズレが発生しているため、相互に不信感を募らせながら関係を悪化させ、最悪の場合には契約1年足らずで破局を迎えることもある。
3PLは「飽和点」「曲がり角」に
3PLが日本に導入されてから、おおよそ20年が経とうとしている。今一度荷主および3PL事業者の双方で、次のステージに向けた新たな取組みに進むべきである。
まずは現状を振り返ったとき、以下のようなことに思い当たることはないだろうか?
●荷主
・3PL企業に物流を委託して、「うまくいっている」と胸を張って言えるか?
・改善提案を期待したけど、思ったように提案が出てこないということはないか?
・当初の予定どおりにコストが下がらずに、イライラしていないか?
・3PLベンダーに何か要請したら、すぐにアンダーの業者を連れてくることはないか?
●3PL事業者
・自社の3PL事業は顧客の付加価値を高めている、と自信を持って言えるか?
・荷主から改善を求められていても、「どうしたらよいかわからない」ということはないか?
・ある程度仕事は取れているけれども、将来的な事業の存続に不安がないか?
・他社との差別化が(小さなことでも)図れているか?
3PL事業は、現在「曲がり角」「飽和点」に差し掛かっているのではないだろうか。
次回以降、荷主・3PL事業者双方の現状課題を改めて確認していく。
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