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コンサルタントが見た「世界の品質」 『'情'と'ケンチャナヨ(大丈夫)'の国、韓国 』 

JQMQvol.10_20130130.pdf

仕事で韓国に初めて訪れたのが1987年。当時は、現代自動車の小型車『ポニー』がタクシーとして使われていた。韓国で初めて乗ったタクシーの後部座席の床は、鉄板丸出し。しかも錆びて穴が空いている。こんなボンコツ車を猛スピードで走らせるものだから、生きた心地がしなかったことをよく覚えている。
あれから20数年が経ったいま、ソウル市内を走るタクシーは綺麗で立派な車に変貌を遂げた。商品の品質向上が著しいことは言うまでもない。車のみならず、現在世界を席巻しているスマートフォンをはじめとしたデジタル商品群の数々・・・も周知の事実である。
韓国は、経済の急成長した1970年代以降、日本のTQCを導入し、1980年代末には三星グループを始めとした各企業がアメリカからシックスシグマを導入したことによって、品質が飛躍的に向上した。ただし、その方法は強力なトップダウン方式といえる。徹底的に管理するといった方法を取っているが故に、現場では品質を自ら守ろうとする意識がまだまだ弱い。上司からの指示に従い、受動的な品質管理行動となっている側面は否めない。
韓国は'情'が重視される国である。この'情'とは、お互いが家族のように関心を持ち、関わり合いを持つことである。ときには規定、基準よりも人間の情が優先される。それが甘えとなり品質問題を引き起こしても、情に流され、ケンチャナヨ(大丈夫!!気にしないで、仕方ない)と置き去りにされることがある。この情が韓国の企業や製品の品質の根底に隠されている。一見相反しているようにも見える伝統的な情の文化と、強力なトップダウンによって品質管理が実施されているところが、韓国企業の特徴といえる。
良くも悪くも、情が全てに勝る国、そして、ケンチャナヨ(大丈夫、気にしないで)の国。それが韓国である。でも、どこか人間的で韓国人特有の暖かさを感じる部分でもある。

(JMAC KOREA 副社長  シニア・コンサルタント 藤井 龍夫)

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