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経営層が見ている品質  「品質基準」

JQMQvol.16_201407.pdf

製造業の品質は、第一に製品に込められている。その製品の品質を決定するものは、品質基準である。

企業は、この品質基準への適合を目的として設計、生産、検査等を行う。したがって、品質基準が大切であることは言うまでもない。

 品質基準については、国際規格や国家規格といった一定の基準を達成することが前提となる。日本の国家規格はJISであるが、製品によっては法律で規制された技術基準等が存在する。例えば、PSE(電気用品安全法)などである。こうした規格や基準は市場に参入する際のエントリー資格として位置づけられる。企業が市場において競争優位性を実現するためには、エントリー資格だけでは不十分であり、自社独自の品質基準が重要となる。

 日本製品は過去、その品質優位性により競争優位を獲得してきたため、高い品質基準を設けている企業が多い。

現在、その高い品質基準と市場競争力のバランスを取ることが難しくなっている。実際、様々な企業の経営陣から品質基準に関する次のような悩みを聞くことが多い。

①グルーバルに展開しているが、自社の品質基準では高コストとなるため、コスト競争力を出せない地域が存在する。

②自社の品質基準を満たすためには、製造委託先や外注先が限られる(または高コストとなる)。

 その結果として、思うような生産編成が進まない。

③製品をプレミアム系とエントリー系等に分けることにより、同一の品質基準による運営に無理が生じたり、コストが過剰傾向となる。

④現在の製品の使い方において、過去に決めた品質基準の妥当性をそもそも判断できない(妥当でないと思うが自信がない)。

⑤どこが、品質基準の妥当性を判断した上で改訂するべきか、誰もわからない。答えを出せない(結局、誰も音頭を取らない)。

⑥どのような考え方で、自社の品質基準を決めたかがわからない。

 品質基準は、自社の製品特性、不具合のある製品が顧客に届いた場合の問題の大きさ、全体のコスト、ブランドイメージに与える影響等を踏まえた上で、自社が戦っている市場を見据え、経営課題として検討、決定することが望ましい。

コンサルタントプロフィール

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シニア・コンサルタント 松田 将寿

早稲田大学大学院修士課程国際法専攻修了後、1994年にJMAC入社。
製造業を中心に24年の経験(生産領域コンサルティング12年、戦略領域コンサルティング12年)を持ち、国内外(外は現地企業・大学なども含む)、大企業~中小企業など幅広く支援を行っている。
品質カテゴリーに関しては、経営・事業戦略への組込み、経営体質作り(改善・改革の骨格)として捉えて支援している他、品質マネジメントシステム、品質保証・品質管理の側面から組織・機能連携、外注戦略、業務改革なども支援している。

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