コンサルタントの視点 「品質情報を可視化する」
品質レベルの向上にあたっては、品質情報の活用は不可欠であり、情報体系の整理が必要となる。よく目にすることとして、情報システムの導入により品質情報の統合化・見える化、即時共有化を図るというものである。しかし、以下のようなステップを踏まえなければ、有効に活用しきれないと感じている。
品質情報は開発、設計、生産、販売、消費(顧客)、アフターサービスなど、製品・サービスのライフサイクルの全般にわたって、それぞれに存在している。こうした情報を必要なときに、検索、追跡できるように一元的に管理し、活用できる仕組みがあれば、再発防止や品質コストの削減を図ることができる。
多くの企業が品質情報の重要性を理解している一方で、どこに、どのような品質情報が存在しているかが一覧として整理されず、実態としての全体像を正しく把握している人もいないといった状況をよく目にする。そうした企業では、品質情報の蓄積、更新、伝達(共有)が上手く機能していない。
結果、たとえば、「工場で作り難い設計であるにも関わらず次の製品開発でも解消されていない」、「開発者は自分の知っている情報ソースの範囲内で顧客の情報を収集しているため、顧客の要求事項を捉えきれていない」といった問題や、部門や担当者によって品質情報に関する問題、課題認識が異なるため、改善の納得・合意に時間を要するといった問題が発生する。
品質情報の実態把握と整理にあたっては、最初に品質情報の種類を再定義、再設定する必要がある。品質情報とは顧客からのクレーム情報や、開発、設計、生産時に発生した不具合情報だけでなく、法規制や基準・規程類など顧客要求を満たすために全組織において遵守するべきもの、それらの遵守状況や実施結果を確認するための記録類、品質方針や品質中期計画、年度計画など自社の品質レベルの維持・向上のために計画的に実施するもの、ノウハウ・知見など他部門と共有するものなどがあるため、しっかりとした定義が必要になる。次に、品質情報の受発信部門と担当、受発信方法(メール、電話など)、属性(受発信の頻度、タイミングなど)に関する現状を把握し問題点を整理する。以上を踏まえ、品質情報体系、品質情報把握・活用のあるべき姿を描き、実行に移すことが重要である。
情報システムの導入により品質情報の統合を図ることは重要だが、どこに、どのような情報が存在するかが一覧化されるだけでも、品質問題の解決につながる。情報システムなどツールの整備ありきでないアプローチも検討いただきたい。
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