経営層が見ている品質 「一人前の定義:作業半分、改善半分」
日本の製造業の強みは「品質」であり、現場の強さが挙げられる。しかしながら、最近、様々な会社への訪問を通して、その現場が過去と比べ、弱くなっていると感じるシーンに度々出会う。ここで言う現場とは、開発・設計・生産技術・生産といった業務に従事する一人ひとりを指す。日本の現場の強さは、品質に関連して言えば、以下のことであったと考える。
・基準・標準を守ること ・問題に気づくこと・その問題がなぜ発生しているか?メカニズムを探求すること・しつこく知恵で解決すること
これらのことを十分にやりきれていない実態を、コンサルティングの場面で散見する。ひと言で言えば、考えていない、あるいは深く考えない人が会社の中で増えている。そうした状況では、不具合の未然防止や、現場での異常の察知が不十分となるわけである。
先月、製造現場に訪問したとき、とある監督者の発言が印象的であった。作業ミスが発生した現場を見学した際、作業者が担当の工程をミスなく作業できるようになれば「一人前」とし、認定バッチを与える制度があるとの話があった。はたして、それが一人前であろうか?と疑問に思う。
少々昔話になるかもしれないが、製造現場での一人前の定義は、「作業ができて、かつ改善もできること」ではなかっただろうか? 直面する問題に気づき、その問題を解決することが「改善」であるにも関わらず、監督者がそれを認識していないことに少々落胆した。このことが気になり、いくつかの会社で同じようなことを聞いてみたが、同じような一人前の定義である。これでは、社員に対する目標設定や期待値も低くなり、作業者自身の目標レベルも下がると考えられる。
筆者が製造業にいた頃、現場実習のときに、鬼監督者から繰り返し言われたことを思い出した。「一人前の定義」とは、「作業半分・改善半分=どちらも出来て一人前ということだ!」と。 製造業で脈々と言われてきた「一人前の定義」を理解していない会社・職制・監督者が増加していることが、品質問題の発生やQCDの改善が進まないことの一因になっていると改めて思う。
僭越であるが、読者の方々も、今一度貴社の「一人前の定義」を確認してはいかがであろうか。
コンサルタントプロフィール
シニア・コンサルタント 石田 秀夫
大手自動車メーカーの生産技術部門の実務を経て、JMACに入社。ものづくり領域(開発・設計~生産技術~生産)のシームレスな改革・改善活動のコンサルティングに長年従事。生産技術リードでものづくりを変え、日本製造業の強みである「造り込み品質」や「ものづくり」の力を引き出し、企業を段違いな競争力にするコンサルティングを推進中である。近年は日本版インダストリー4.0/IoT化によるQCDダントツ化デザインや生産戦略/生産技術戦略、ものづくりグランドデザインを主要テーマにしている。
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